手応えを感じたのは間違いなくこの義手があるからこそ
アイデアを聞いた時は画期的だと思ったけど、同時に目にするまでは「どんな義手になるんだろう?」とも思いました。担当の義肢装具士も「今までこのような義手は作ったことがなかった」ということでした。ストックがついた義手を必要な人はあまりいなかったのだと思います。そんな中で出来上がった試作品。初めてつけた時は「これなら行ける」と直感しました。もちろんこれさえあれば富士山に登れるわけではないけど、とても良い感触でした。
実際に登山の練習で初めてストック義手を使ったのは去年11月、静岡の金冠山でした。標高800メートルくらいで、ハイキングコースのようでしたが急斜面もありました。バランスを崩してストック義手で体を支えるシーンが何度もありました。山頂にたどり着くと富士山が見えます。改めて「この体で行ってやる」と決意が芽生えました。
ストック義手の存在は思った以上にプラスになりました。転ぶリスクがかなり改善され、両手両足の4点で体を支えられるから安定感が違いました。後ろに倒れないよう人にバックアップしてもらったり、大きな段差を上る時は体全体を持ち上げてもらったり、人のサポートが必要な場面はありましたが、ストック義手があると結構自力で行けます。少なくとも10月に御巣鷹山を登った時ほど人の力を借りなくて済む場面は多かったです。
登山への手応えを感じたし、それは間違いなくこの義手があるからこそでした。頼もしく、素晴らしいパートナーです。