「素敵すぎて泣いてる」「感動した」――。そんな感想が相次いだのは、インターネットで「病理医ヤンデル」として知られる病理診断医・市原真さんによる2023年1月13日のツイッター投稿だ。
市原さんがある日ツイッターを開くと、そこには「突然のDM失礼します」という挨拶から始まり、「私は6年前、まだ小学生だった頃に市原先生に宛てた手紙を書きました」と書かれたダイレクトメッセージ(DM)が届いていた。
その相手は、市原さんに「病理医とはどういう仕事か」と真剣に尋ねていた小学生(当時)だったという。そして、6年ぶりの連絡に書かれていたのは「医学部医学科に合格することができました」という報告だった。
どのような経緯で今回の連絡に至ったのか。J-CASTニュースは1月13日、市原さんに詳しい話を聞いた。
「質問内容が極めて的確で、非常に具体的」
事の発端は、6年前に、職業人に質問をするという学校教育の一環で、とある小学校の教師と児童から市原さんの元に手紙が届いたことだった。児童の質問に「できればお返事をいただきたい」というメッセージが添えられていたという。
「病理医とはどういう仕事か」という主旨の質問が書かれた小学生の手紙を見て、市原さんは「質問内容が極めて的確で、非常に具体的であることに『ぐっときた』のです」と当時を振り返った。
「これだけしっかりした質問をいただけたということから、『本気で病理医という職業に興味を持ってくれたのだな』とはっきりわかりました。真剣に質問されたので真剣に答えようと思わされました」
小学生が病理診断医という職業に関心を持ってくれた嬉しさがあり、市原さんは1万字程度の回答を返信し、さらに、この回答を要約するよう「宿題」を課したという。
1か月ほど経つと、この小学生から「宿題」の回答が返ってきた。当時の心境について、市原さんは「初回の質問のお手紙よりもさらに感動しました」と述べた。クオリティの高さのみならず、原稿用紙の枠外には、担任の先生などによる指導の痕跡が見えるメモがあった。
「(1万字程度の回答を)本気で読み込んで、的確にまとめ、『論考』と言っていい考察を加えてくださいました。なんてすごい方なんだろうと驚きました」
「真摯な対応がこんなにも長い間誰かを勇気づける」
こうした6年前の出来事があった中、市原さんがある日ツイッターを開くと、当時小学生だった学生から「覚えてくださっていますか??」というDMが届いていた。
「あの手紙のお返事をいただいた日から、医師に対する憧れがさらに大きくなり医師を目指すことを決めました」と続ける学生は、「市原先生にいつか良い報告がしたい」という思いが募っていたという。そして、とある大学の医学部医学科に合格したことを市原さんに伝えた。また受験勉強中、市原さんからの回答を何度も読み返していたことも明かした。
この連絡に対し、市原さんは「最初はウソかと思ったのです。あまりに話ができすぎているので」と驚きを露わにしつつも、この学生の名前が書かれていたこともあり、「なんというか、こんなにうれしい報告を受けたことがなく、一瞬呆然としました」と取材で振り返った。
学生の連絡に対し、市原さんは「お手紙よく覚えていますよ。ちゃんととってあります(明日職場のレターファイルを探してみます)」「ここからは私を含めた多くの医師、医学生たちと伴走することになります。これから、同じ世界で一緒にがんばりましょう!」などと返信したという。
市原さんの1月13日の投稿は、同日20時までに2000件以上のリツイートや8000件以上のいいねを集めており、「素敵すぎて泣いてる...」「久しぶりに凄く感動してしまった」といった感想や、「真摯な対応がこんなにも長い間誰かを勇気づけることができるんだな」「真摯に向き合う大人が子供に与えられる影響の大きさは文字通り人生を左右する」などの称賛する声が寄せられている。