令和に「駅の伝言板」設置続々 平成には「いたずら書き」「通行の妨げ」で迷惑モノ扱いも...なぜ再注目?

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末期は「九割が目的外の落書き」の駅も...姿消した伝言板

   かつては多くの駅に設置されていた伝言板。鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏は1月11日、J-CASTニュースの取材に伝言板が果たしてきた役割を次のように説明する。

「駅の伝言板は20世紀初頭、国鉄、私鉄の主要駅に設置が始まったと伝えられています。自動車交通の発達以前、人と貨物、荷物は鉄道駅を中心に回っていました。人やモノが集まり、各地へと向かっていく駅は、自然と情報の中心地にもなります。通信手段は手紙、電報くらいで電話すら普及していなかった当時、鉄道利用者が連絡を取る手段として、拠点となる駅に伝言板が置かれたのは自然な流れだったと言えるでしょう」

   駅の伝言板は連絡手段だけではなく、待ち合わせスポットとしても機能した。しかし、平成に入ると携帯電話が普及。いつどこにいても連絡を取り合えるようになると、伝言板の役割は奪われ、全国の駅から姿を消していった。そんな「末期」の状況について、枝久保氏は「伝言と関係ない書き込み、いたずら書きも多かったと言います」とする。

   実際に、1996年12月5日の読売新聞東京版の朝刊には「次々姿消す駅の伝言板 若者たちのいたずらの場 携帯電話の普及も一因」という記事が掲載された。営団地下鉄(現:東京メトロ)表参道駅では「三か所ある伝言板の内容は九割が目的外の落書き」だったという。新宿や池袋、渋谷といったJR東日本のターミナル駅では、通勤時間帯の通行の妨げになることなどを理由に、伝言板が撤去されたとした。

   末期は伝言とは関係ない書き込みが目立っていたことについて、枝久保氏は「伝言板が本来の『個人的なコミュニケーション手段』としての役割を失っていく中で、『公衆に向けたメッセージ(自己顕示欲の発露)』としての役割が注目された結果と言えるでしょう」との見解を示す。

   そして、今回伝言板を「復活」させた2社の取り組みからは、本来の「個人的なコミュニケーション手段」としての役割と、末期に注目された「公衆向けメッセージ」としての役割が、それぞれ見いだせるとする。

「PRTIMESが年末年始に実施した、実際の伝言板を池袋に設置するキャンペーンでは、『たったひとりの、あなたに届け。』をキャッチコピーとしているように、伝言板本来の『個人的メッセージ』を重視しています。一方、ジェイアール東日本企画(jeki)が昨年9月から展開する『デジタル掲示板』サービスは、伝言板ふうのデザインとしながら『公衆向けの宣伝』という位置づけです。鉄道事業者が『迷惑』と思っていた形のサービスが公式に提供されるのは興味深いところです」

   「昭和・平成レトロ」ブームとも言われる中、伝言板の価値が見直されているようだ。

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