福岡市の演劇専用劇場「博多座」が、鑑賞時の思わぬマナー違反に注意を促している。
暗闇でのスマートフォン操作に加え、最近ではスマートウォッチの光が周囲の迷惑になっているという。宣伝担当者によれば、半年前から苦情が頻繁に寄せられるようになった。
「観たいのは『推し』という光」
博多座は、ミュージカル「エリザベート」の公演を翌日に控えた2023年1月10日、鑑賞マナーに関する検証動画をツイッターで公開した。スマホやスマートウォッチの光がどれほど迷惑か可視化する趣旨だ。
関係者が実際に暗闇の座席でスマホを操作し、「シンプルに目立つ」と周囲からの見え方を伝える。スマートウォッチでは、スマホほどではないものの「それなりに目立つ」と啓蒙した。
「最近は特にスマートウォッチの通知が無意識に光っている方が増えておりますので今一度ご配慮いただれば」と要望し、開演前の電源オフか、光や音が出ない設定にするよう理解を求めた。動画は最後、「観たいのは『推し』という光」とのフレーズで締めくくっている。
投稿は2万以上リツイートされ、特にスマートウォッチへの注意喚起が注目された。「悪気も自覚も無いであろうスマートウォッチの光もめっちゃ目立つ」「大劇場でスマートウォッチをそのままにしている人いたなあ。気になるしほんと嫌だった...」と不愉快な思いをしたことがある人は少なくないようだ。
多くのスマートウォッチは、メールや電話、ヘルスケア情報などの通知機能がある。手首の動きで画面のオンオフを切り替える設定もあり、意図せず画面が点灯する場合がある。人気のApple Watch、Google Pixel Watch、Fitbitなどには「シアターモード」や「サイレントモード」といった名称で画面点灯を抑える機能がある。
映画館でも同様のトラブル
博多座の宣伝担当者は11日、J-CASTニュースの取材に「スマートフォンのマナーは皆さんご存じだと思いますが、最近増えているスマートウォッチは小さい光なので目立つとは思わない方が多いようです」と検証の背景を説明する。
スマートウォッチの利用者は急拡大している。調査会社のMM総研によると、2021年度の国内販売台数は健康管理意識の高まりを追い風に、前年度比49.6%増の343万台だった。
博多座では半年ほど前から、スマートウォッチの光への苦情が劇場係員に頻繁に寄せられるようになったという。劇場内でのアナウンスでは、スマホのマナーに加えて注意するようになった。
宣伝担当者は「スマートウォッチを常に身に着け、(健康管理のためのデータを)測っている方が多いようなので、スマートフォンのように電源を切る意識がないのかもしれません」とおもんぱかる。
映画館でも同様のトラブルが増加している。イオンシネマの運営会社は「スマートフォンやスマートウォッチといった機器を持ち歩くことが当たり前となった昨今、『映画鑑賞中に機器が発する光が気になる』というお声をいただくことが以前より増えてまいりました」(プレスリリースより)として、21年10月から上映前に啓蒙動画を流している。
暗い客席でスマートフォンやスマートウォッチの光はどれくらい目立つのか検証しました。最近は特にスマートウォッチの通知が無意識に光っている方が増えておりますので今一度ご配慮いただればと存じます。明日からのミュージカル『エリザベート』はぜひ闇が広がる客席でご覧ください。 pic.twitter.com/eJy2cs6Wxi
— 博多座 (@hakatazatheater) January 10, 2023