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将棋「鼻出しマスク」で反則負け 本人は「着用強制」批判も...連盟「政府の方針・基準に則った対応をする」

   2023年1月10日に行われた将棋のタイトルをかけた名人戦の予選にあたるC級1組の順位戦で、日浦市郎八段(56)が平藤眞吾七段(59)と対局して、マスク着用の規定違反とされて反則負けになった。

   日浦八段は、これまで週刊誌などで対局中の「マスク着用強制ルール」を批判していた。主催者の日本将棋連盟は1月11日に「着用については議論があるが、政府の方針・基準に則った対応をする」と公式サイト上で説明した。

  • 開始直後からトラブルに(写真はイメージ)
    開始直後からトラブルに(写真はイメージ)
  • 開始直後からトラブルに(写真はイメージ)
  • 日浦市郎八段(日本将棋連盟のサイトから)

「応じなければ反則負けになる」と伝えたが、日浦八段は突っぱねる

   主催者でもある朝日新聞などの報道によると、新型コロナウイルスの感染拡大やノーマスクを嫌がる棋士の存在から、連盟が2022年2月1日から「対局中は、一時的な場合を除き、マスク(原則として不織布)を着用」といった臨時対局規定の運用をスタートした。そして、規定に反したときは、「反則負けとする」と定めた。一時的な場合とは、飲食中だったり、人と2メートル以上離れていたりするときを指す。

   同年10月28日のA級順位戦では、佐藤天彦九段(34)が対局中のマスク不着用で反則負けとなり、初のケースと大きな話題になった。対局相手からの訴えを受けて連盟が決定したが、佐藤九段は、故意ではなく過失だったとして、不服申立書を公表している。

   ところが、今回の日浦八段は、週刊文春の取材やユーチューバーとの対談を通じて、マスク着用の強制はおかしいと連盟の規定に異議を唱えていた。そして、23年1月10日に行われた平藤七段との対局をめぐり、朝日新聞は日浦八段が「鼻出しマスク」で反則負けになったと報じた。それによると、対局開始直後に平藤七段から相談があり、立会人が鼻もマスクで覆うよう何度か促したという。連盟とも協議し、「応じなければ反則負けになる可能性もある」と伝えたが、日浦八段には断られていたという。

「今後は、コロナ禍の状況を見極めつつ、規定の改廃を適切に判断」

   日本将棋連盟は、11日夕になって、日浦八段がマスク着用の規定違反で反則負けとなったことについて、「順位戦における裁定について」と題した公式サイトの発表で、次のように経緯を説明した。

「同対局開始前に、対局相手の日浦八段が鼻を出したマスクの着用を行っていたことから、平藤七段が鼻を覆った『正しいマスクの着用』を求めましたが、日浦八段がこれを了承しなかったため、平藤七段が対局開始後に立会人に対応を求めました(対局規定第3章第9条第2項)。立会人は即座に日浦八段に対して、臨時対局規定に従って、『正しいマスクの着用』を行うように注意しましたが、本人が聞き入れず、その後、対局規定第3章第9条第3項に基づき、3回に渡って立会人が日浦八段に対して同様の注意を繰り返しました。日浦八段が『正しいマスクの着用』を拒み続けたため、立会人から注意に従わない場合は反則負けにする可能性がある旨を通知しましたが、本人より従わないとの回答があったため、立会人が臨時対局規定第3条及び第4条に基づき、日浦八段の反則負けを裁定しました」

   そのうえで、連盟の裁定について、次のように理解を求めた。

「昨今の社会情勢を鑑みた場合、対局中のマスク着用義務の有無については議論があるところ、所属する棋士・女流棋士には、高い公共性を求められる公益法人として政府の方針・基準に則った対応をする旨を定例報告会の場で示しております。今後につきましても、コロナ禍の最新状況を見極めつつ、同規定の改善や改廃について適切に判断して参ります。本対局の観戦を楽しみにして頂いておりました将棋愛好家の皆様には、このようなご報告となり心苦しい限りですが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます」

   日浦八段への処分があるかなどについて、連盟にJ-CASTニュースが取材したが、関西本部の広報課は11日夕、10日の対局の裁定については公式サイトの発表を持って回答に代えさせていただく、と答えるに留まった。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)