昭和の名曲を現代風に解釈したミュージックビデオ(MV)の内容をめぐり、議論が巻き起こっている。
ソニー・ミュージックグループは2022年2月にシンガーソングライターの故・村下孝蔵さんによる1983年のヒット曲「初恋」のMVを公開。現代の学校生活を舞台にした内容だったが、YouTubeのコメント欄では「思ってたのと全然違う」「カラオケの動画みたい」などと厳しい意見が目立っている。
作品監督「名曲の世界観をとにかく壊したくなかった」
「初恋」は村下さんのデビュー5枚目のシングルとして83年2月に発売。恋心を抱いた若者の切ない感情を歌ったフォークソングで、売上50万枚を超える村下さん最大のヒット曲となった。これまでに石井竜也さん、玉置浩二さん、吉幾三さん、純烈などの有名歌手がカバーしている。
昭和を代表する名曲として知られる同曲だが、これまでにミュージックビデオは存在しなかった。そうした中、シングル発売39年目を迎えた22年2月25に発売元のソニー・ミュージックグループが初となるMVをYouTubeで公開した。
映画監督の井上真行氏が監督を務めたMVは、主人公の女子生徒(岸せいらさん)が好きな男子生徒(髙橋大翔さん)を追いかけ、スマホのカメラで動画を撮影し続けるという内容だ。しかし、あまりのしつこさに男子から「やめろ!」と叱責されると撮影を諦め、友人との自撮りを楽しむように。それでも、卒業式の帰り道には再び男子にスマホのカメラを向け、手を振りながら立ち去る男子を見届けたあと、空を見上げて物語は終わる。
井上氏は当時のニュースリリースで「『初恋』を現代的な解釈で映像化するというコンセプトをいただきました。前提としては、この愛され続ける名曲の世界観をとにかく壊したくなかったです。そして、僕の中でスマホのカメラがあれば、カメラを通した時だけ好きな男性に近付ける臆病な女性の心理に辿り着きました」と制作背景を語っている。