未曽有の危機を迎えたコロナ禍
――新型コロナウイルス感染症によって多くの同人誌即売会が存続を危ぶまれる状況となりました。コミティアにはどのような影響を与えましたか?
「もちろん経営的なダメージも大きかったですが、コロナ禍をきっかけにマンガを描けなくなった作家のことも心配でした。同人誌即売会は1つの締め切りの役割を果たしていましたが、緊急事態宣言などが出ると、不要不急なものとして開催中止が続いてしまった。そうなると作家さんたちのモチベーションもあがりません。この時期に同人活動を止めて、オンラインに移行した人も多かったと思います。そのためにも中止になった日程にツイッターのハッシュタグによる『エアコミティア』を開催したり、可能な限りのフォローを行いました。
コロナ禍も3年目に入り、最近はやっと人が戻り始めています。いわゆる巣ごもり需要で新しく描き始めた人が増えてきました。一方で、会場では『3年ぶりの参加です』という声を聞くなど、かつての参加者が戻りつつある気配も感じます」
――これほどの危機はコミティアにとって初めてだったのでしょうか。
「そうですね、コロナ禍が始まった2020年当初は先の見通しがたたず、絶望的な気持ちでいました。コミティア実行委員会はボランティア組織で運営されていますが、イベントが大規模化したことにより法人化が必要になり、事務所を構えて数人の社員もいます。そうした会社としての機能部分を放棄せざるえない可能性がありました。それでも個人レベルでどうにか継続できないかを模索しましたが、それまでの形を維持するのは不可能だったと思います」
――コミティアは20年8月から10月にかけクラウドファンディングを実施しました。目標額3000万円に対し、1万1980人から1億4791万1500円の支援がありましたが、これによって存続の危機は脱したのでしょうか。
「クラウドファンディングの想像を超えるたくさんの支援には感謝しかありません。それと同時に『この人たちの期待と信頼を裏切れない』という責任も強く感じました。今はもう創作活動を止めてしまった人たちからも、次の世代のためにこの場所を残してほしいから故郷を守る気持ちで支援します、という言葉をいただきました。そうした温かいメッセージが何千通も寄せられ、読んでいて涙が出ました。出版社や電子配信の会社の方からも大きな支援をいただき、マンガ業界全体のためにもコミティアを続けなければいけないとあらためて自覚しました。
とはいえ、コロナ禍は長期化しているので。危機を脱したと言えるかは難しいです。開催だけで自立できる収益にまで戻すには、もうひと頑張りという状況です。それでもようやくそう言えるようになりましたし、クラウドファンディングの収益が助けになってこの3年を乗り切れたことは間違いありません」