正月といえば、やはり「初日の出」。年の初めの縁起物である初日の出には、言わずもがな天体観測としての側面もある。
そこで、J-CASTニュース編集部は識者に初日の出をより確実に見る方法を聞くべく、神奈川県平塚市にある「平塚市博物館」で天文分野の学芸員として勤務する藤井大地氏にインタビュー。すると、取材前には想定していなかった「元日のもう1つの天体ショー」の存在を記者は知ることになったのだった。
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)
初日の出を見るなら、国際宇宙ステーションから!?
藤井氏は平塚市博物館の学芸員としてプラネタリウムの生解説や望遠鏡を使った観望会などの教育普及活動に携わる傍ら、流星観測の専門家として報道機関にコメントするなど、メディアに名前が出ることも多く、幅広い活動を行っていることで知られている。
――初日の出を見ようと思った際に少しでもその確率を上げようとするなら、取るべき行為とはどういったものがあるでしょうか? やはりそれは、天候に邪魔される可能性を考慮して観測時間を少しでも多く取るといった行為になるでしょうか?
藤井:地平線や水平線が見える箇所で、太陽が出たての時から初日の出を観測するということになるかと思います。平塚市内ですと、湘南平(平塚市から大磯町の境界にある丘陵)がお勧めスポットで、毎年、多くの方がいらっしゃっています。
――全国一般でいうと、どんな特徴を持った地形の場所で見ればよいでしょうか?
藤井:やはり、山の頂上から地平線を眺めるか、浜辺や海岸など水平線が見える場所に出ることになるかと思います。あとは、天候を考慮するなら、日本海側よりは太平洋側に行った方が雲に邪魔されない確率は高いかと思います。
――そう考えると、山の頂上を目指すのは登る手間はもちろん、厳しい寒さもあって負担が大きいですから、「太平洋側の浜辺や海岸に行く」というのが1つの答えになりそうですね。平塚市も該当しますね。
藤井:あと、初日の出を見る面白い取り組みとしては、国際宇宙ステーションから見える初日の出を見る番組がBSテレ東で放送され、ツイッターでも配信されますので、こちらもお勧めです。肉眼での観測ではありませんが、寒さ対策としては完璧かと。
――何と! そんな方法があったとは!
藤井:なお、2023年の元日は確かに初日の出もお勧めなんですが、もう1つ、夕方に非常に珍しい天体ショーが発生します。
――と、言いますと......?
元日の夕方、南の空に水金火木土天海が大集合!さらに月も!
藤井:実は、22年12月25日から23年1月3日にかけて、夕方の南の空では水星、金星、火星、木星、土星、天王星、海王星、さらに、月が並ぶんです。
――そんな現象が起こるんですね。どれぐらい珍しい現象なんでしょうか?
藤井:地球を除く全惑星が空にそろうのは、次は2025年2月夕方、その次は2060年11月夕方のようです。また2040年9月9日夕方には、明るい5惑星と月が狭い範囲にぎゅっと集まります。
――となると、見たいと思うならば、忘れないうちにという意味も込めて2023年の年明けに見ておいた方が良さそうですね。具体的にはどんな出現の仕方をするんでしょうか?
藤井:天王星と海王星は肉眼では見えませんが、それ以外は肉眼で並んでいるのが確認できます。特に、1月1日は明るい惑星と月が等間隔に綺麗な並び方をしています。
なお、水星は太陽が沈んだ後の明るい西の空に見えるため、かすんでしまって探すのが難しいです。探し方としては、今回、水星はより見やすい金星の近くに出ていますので、金星を頼りに探すと良いでしょう。
――なるほど! 見つけにくい星は、より明るい星を目印に探せばよいのですね。
藤井:他にも、たくさんの出現は予想されていませんが、23年1月4日には「しぶんぎ座流星群」が見頃を迎えるほか、7日の満月は、23年の中で一番小さく見える満月ですので、これらの天体ショーもお勧めです。
――となると、23年は年明け以降、正月休みと言える期間中にはレギュラーなものとしては初日の出としぶんぎ座流星群があることに加え、通常の年にはないものとしては惑星の大集合と年内最小の満月があるわけですから、天体観測にはうってつけの年初めになりそうですね。