「年収1000万円は遠い過去!」 バス運転士の給与をド直球発信...なぜ?京都市交通局に聞く背景

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   「いいですか、落ち着いて聞いてください」――。京都市交通局が公開した、市バス運転士の給与削減幅が話題になっている。

   約20年前には年収が1000万円ほどあったものの、現在は約半分になっているという。適切な給与水準に引き下げたとアピールしているが、どのような狙いで発信したのか。

  • 京都市交通局ホームページより
    京都市交通局ホームページより
  • 京都市交通局ツイッターより
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  • 京都市交通局ツイッターより

「もうずーっと前から市バス運転士の給料は...」

   医師風の人物が正面を見据え、こんな一言を告げる。「いいですか、落ち着いて聞いてください。年収1000万円の市バス運転手は存在しません」。

   京都市交通局が2022年12月27日、ツイッターなどで公開したイラストの一幕だ。2022年の「ネット流行語100」にも選ばれ、衝撃的な内容を伝える際に使われるネット俗語「いいですか、落ち着いて聞いてください」に絡めた制作物である。

   「年収1,000万円は遠い過去!現在は適正な給与水準です!」とまくしたてるようなツイートもしており、専用ページでは「もうずーっと前から市バス運転士の給料は民間のバス運転士と同水準なんです!!!!(クソデカボイス)」(原文ママ)と声高に訴えている。

   補足資料によれば、1999年度の京都市営バス運転手の平均年収は926万円だった。しかし、段階的な見直しで2021年度は542万円と半分ほどになり、民間のバス運転手(529万円)と同水準、政令指定都市のバス事業者(655万円)より安いという。

京都市交通局資料より
京都市交通局資料より

   交通局は今後も、仕事へのやりがいを維持しつつ、業務の効率化や残業削減、職員数の適正化などを通じて人件費の抑制に努めるとする。

「給与の低さを誇ってどうする」

   ツイートは160万インプレッション(総表示回数)、4000リツイートと多くの目に留まり、「公営さんっていつまで経っても昔の高給取りのイメージで叩かれて気の毒」「給与の低さを誇ってどうする」「多かったら多かったで文句が来るし少なかったら少なかったで文句が来てて見とって可哀想」とさまざまな意見が寄せられている。

   京都市交通局企画総務課の澤進一郎さんは27日、J-CASTニュースの取材に、ツイートの背景には、厳しい財政状況があると明かした。

   市バスと地下鉄は、コロナ禍で事業存続の危機にある。市バスの累積赤字解消、地下鉄の単年黒字計上と、経営が上向きになった矢先のコロナショックで、客足の減少により運賃収入が大幅に減った。22年3月策定の中長期経営計画では、市バスで8%、地下鉄で7%の運賃値上げを盛り込む。

   経営計画では「情報発信の強化」も明記しており、2022年6月から毎月、経営状況を「見える化」するためSNSなどに投稿している。今回のイラストもその一環だ。

   澤さんは「我々はどちらかというと公営企業ですので、これまでは今回のような(くだけた)発信は不得手な部分があります。ですが、そうも言っていられない、なりふり構わない経営をしていかなければならず、訴求性を狙うなら、誰しもがわかりやすい漫画のような表現がよいのでは」と考え、イラストを中心とした発信をしている。イラストが趣味で、SNSをよく利用している職員が制作を担当し、すべて内製している。

   今回の発信は「市バスの運転手は1000万プレーヤーという認識が結構皆さんお持ちのようです。ただ、今の厳しい財政状況の中で、それは事実誤認ということを伝えたいとの狙いがありました」と話す。今後も経営状況の理解促進に向け、継続するとしている。

過去に好待遇が批判の的に

   1999年9月の朝日新聞の記事「京都市バス運転手の37%が年収1000万円超す 市議会委/京都」によれば、"1000万プレーヤー"が批判の的となった過去がある。

   他の自治体でも、同様の待遇でコストカットを迫られたケースは少なくないようだ。

「市バス運転手『年収1000万超』693人 累積赤字抱える/神奈川」(1997年、朝日新聞)
「神戸市バス 運転手3割年収1000万超 高い年齢層手当かさむ 平均収入、民間の1.8倍」(2007年、神戸新聞)

   大阪市では、2012年に当時の橋下徹市長が「市の交通局のバス運転手が、今までとち狂ったような給料で生活していた」と累積赤字を抱える中での厚遇を問題視し、民間並みの大胆な引き下げを進めた。

   京都市の経営ビジョン策定でのパブリックコメントでは、「市バス・地下鉄運転士の給与が全国平均と比較すると極めて高い」「自分達がこれだけ大幅に給与削減をしました、と表していただいて初めて市民も運賃値上げに同意できるのではないか」と、給与水準の高さや、情報開示の不十分さを指摘する声が少なくなかった。

   一方、「コロナ禍において、市民の生活の足を守り続けてくれた地下鉄職員、市バス職員には感謝しかない。経営状況が改善し、安定した時には給料の引上げなどをしてほしい」「一般的な民間企業と同程度の水準からさらに職員の給与を引き下げるのは反対。給与水準が下がると人が集まらなくなる」と慎重な見方もある。

   経営ビジョン検討委員会の有識者の間でも、

「一般の方には交通局職員の給与が高いというイメージが刷り込まれている(中略)20 数年前からそうした批判があり、現在は交通局の努力によりかなり改善してきたが、こうしたことは伝わりにくいので,これまでの成果と併せて改めて説明する必要がある」
「人件費の抑制について記載するのであれば、これまでかなりの人件費を抑制してきたという実績をしっかりデータとして示すべきである(中略)。私としては、人件費の抑制についてはあまり強調してほしくない。それは、人件費をカットすれば経費を抑制することができる一方で、優秀な人材が集まらないということになり、大きな損になるわけである」

と議論になった。

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