中国の「ゼロコロナ」政策が破綻するなか、中国政府は2022年12月27日、入国時の隔離措置を23年1月8日から撤廃すると発表した。国内で感染が広がり、水際対策としての意味をなさなくなったことが背景にあるとみられる。
日本政府は22年10月に水際対策を緩和し、国外からの観光客も戻りつつある。だが、「爆買い」の主役だった中国人観光客は、中国帰国時の隔離がネックになっていた。今回の措置で客足の戻りが期待される一方で、新たな変異株が持ち込まれる可能性も指摘される。岸田文雄首相は12月27日、中国本土に対する水際対策を強化することを発表。春節(旧正月)に向けて、インバウンド(訪日客)回復と水際対策のバランスが問われる局面になりそうだ。
入国後は「指定施設で5日間の隔離+自宅で3日間待機」
中国に入国する場合、搭乗前48時間以内にPCR検査を受けた上で「健康コード」を申請し、入国後は「指定施設で5日間の隔離+自宅で3日間待機」が必要だった。外国人など中国国内に自宅がない人は、8日間のホテル暮らしを強いられていた。
国務院の発表によると、搭乗前48時間以内のPCR検査と健康コードの申請は引き続き必要だが、入国時のPCR検査と隔離が撤廃される。「中国に来る外国人のための手配をさらに最適化」し、中国人の海外旅行も「感染状況や、事業者の能力に応じて秩序正しく再開」するとしている。
観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、「コロナ前」の19年の訪日外国人旅行消費額は4兆8135億円。これを国籍・地域別に見ると、最も多いのが中国の1兆7704億円で36.8%を占め、台湾5517億円(11.5%)、韓国4247億円(8.8%)、香港3525億円(7.3%)、米国3228億円(6.7%)が続いている。
日本政府観光局(JNTO)の22年12月21日の発表によると、22年11月の訪日外客数は93万4500人。「コロナ前」の19年11月(244万1274人)と比べると、38.3%まで回復している。そのうち、19年11月に75万951人いた中国からの入国者は、22年11月は2万1000人。2.8%の水準にとどまっている。中国がこのまま隔離措置を撤廃すれば、これが大幅に増えることになる。
感染拡大で「詳細な状況の把握が困難であり、日本国内でも不安が高まっている」
一方で、岸田文雄首相は12月27日午後、中国での感染拡大を受けて
「中央と地方、政府と民間の間の感染情報が大きく食い違っているなど、詳細な状況の把握が困難であり、日本国内でも不安が高まっている」
として、12月30日から中国からの入国者に対して「臨時的な特別措置」を行うと発表した。具体的には(1)中国本土からの渡航者および中国本土に7日以内の渡航歴のある者すべてに入国時検査を実施する(2)入国時検査での陽性者についてはすべてゲノム解析の対象とし、待機施設で原則7日間隔離する(3)入国検査に万全を期すため、今後の中国便の増便等について制限を行う、の3点。岸田氏は次のようにも述べており、現時点では中国本土以外に対する水際対策強化には慎重姿勢だ。
「この措置は新型コロナの国内への流入の急増を避けるため、入国時検査や空港の集約を行うものであって、国際的な人の往来を止めるものとならないよう可能な限り配慮を行って実施する」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)