高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
日銀「事実上の利上げ」は、黒田総裁の独断と考えにくい

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   日本銀行は2022年12月20日、容認する長期金利の上限と下限を0.25%から0.5%程度まで拡大した。会見で、黒田東彦総裁は、事実上の利上げだとの指摘に対し、利上げではないと強調した。また、金融緩和は維持しているとし、景気にプラスとした。

   市場の反応は、長期金利が0.2%程度上昇し、為替は5円程度円高になり、株価は800円程度下落した。黒田総裁は利上げでないと言ったが、市場の反応は長期金利の急騰だった。黒田総裁は9月26日の会見で、長期金利の上限引き上げは利上げに当たるのかとの質問に「それはなると思う。明らかに金融緩和の効果を阻害するので考えていない」と明言していたので、そのとおりだった。

  • 日本銀行の黒田東彦総裁(写真:つのだよしお/アフロ)
    日本銀行の黒田東彦総裁(写真:つのだよしお/アフロ)
  • 日本銀行の黒田東彦総裁(写真:つのだよしお/アフロ)

マクロ経済よりも金融機関を優遇した政策

   その結果、急な円高になったが、黒田総裁は急な為替変動は好ましくないといっていたが、今回の円高は急な為替変動だ。

   また、以前の本コラムで書いたように、円安は日本経済全体のGDP押し上げ要因だったが、円高になったので、株価が急落したのは当然だ。

   円安で企業の経常利益は過去最高となっており、円高が景気悪化につながるだろう。生産拠点の国内回帰の動きにも冷や水を浴びせかねない。

   今後、住宅ローンの金利も上昇し、企業が融資を受ける条件も厳しくなるだろう。一方で、銀行など金融機関の経営には恩恵が大きい。今回の事実上の利上げは、雇用、GDPなどマクロ経済よりも金融機関を優遇した政策だといえる。

   いずれにしても、市場から見れば、従来の発言を翻した「黒田の乱」だ。しかし、これだけの政策方向の転換について、黒田総裁だけの独断とも考えにくい。岸田文雄首相の了解があったと考えるのが自然だ。

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