NHKは2022年12月21日までに、夜ドラマ「作りたい女と食べたい女」のウェブサイトに掲載していたローストビーフのレシピを削除した。第9話に登場したもので、理由は「一部の調理法に不適切な点があったため」という。オンデマンド配信中のドラマでも一部演出がカットされている。
「一部の調理法に不適切な点があったため削除致しました」
「作りたい女と食べたい女」はゆざきさかおみ氏による同名の人気漫画を原作としたドラマ。比嘉愛未さん演じる料理を作るのが好きだが少食の「野本さん」と、西野恵未さん演じる食べることが大好きな「春日さん」が、料理を通して交流を深めていく物語だ。
今回削除されたのは、第9話に登場したローストビーフのレシピだ。NHK公式サイトでは、「第9回(12月13日放送)登場のローストビーフのレシピにつきまして、一部の調理法に不適切な点があったため削除致しました」と掲載されている。22日現在、同レシピページは削除されている。
NHKは調理法の「不適切な点」が具体的に何だったか明らかにしていないものの、NHKオンデマンドの配信では、ローストビーフをアルミホイルで包んで余熱で火入れするシーンがカットされている。
削除前の動画では、フライパンで焼き色をつけた牛ブロック肉を「これをこうして、余熱で温めて、火が入りすぎないようにするんですよ」というセリフとともにアルミホイルで包んでいくシーンがあった。削除後の動画では、牛ブロックをアルミホイルに乗せるも、包むシーンと上記セリフがカットされていた。
ゆざき氏による原作でも同じストーリーでローストビーフが登場しているが、アルミホイルを用いた調理法は紹介されていない。
「余熱を利用するレシピは、肉の内部温度が食中毒を防止できるほどには上がらない」
NHKは削除の具体的な理由を明らかにしていないものの、食品安全委員会では「肉を低温で安全においしく調理するコツをお教えします!」とするウェブページで、「ローストビーフやサラダチキンなどを作る際には気を遣いますね」として、塊肉の調理に関する注意をこう呼びかけている。
「塊肉の表面を焼いた後にアルミホイルで包んだり、肉をジッパー付き袋に入れ、沸騰させた後に火を止めた湯につけっぱなしにするなど、余熱を利用するレシピは、肉の内部温度が食中毒を防止できるほどには上がらないので、やめましょう」
低温調理レシピは「おいしさを追求するあまり、どうしても加熱不足になりがち」で、「皆さんが思っている以上に、低温調理は時間がかかります」という。
ローストビーフでも用いられる牛ブロック肉で特に注意したいのが、食中毒の原因となる腸管出血性大腸菌O157だ。菌はは通常、肉を切った表面にはついているが、牛塊肉の内側にはいないというものの「冷蔵保管が長くなり肉の熟成が進むと、菌が表面から内側に入ってゆきます。包丁で切れ目を入れたりするによって菌が内側に入り込むこともあります」という。
肉の重量や大きさによって内部の温度上昇の程度も変わる
一律に加熱時間が定められているわけではなく、肉の重量や大きさによって内部の温度上昇の程度も変わるという。「肉の重量や厚みなどから加熱時間まで、低温調理器メーカーのマニュアルや、指定するレシピにしたがい正しく作り、肉が大きい場合には加熱時間を延ばしてゆくことが大切」とした。
アルミホイルで包む方法に関連しては、「食品安全委員会で調理科学を担当する香西みどり委員が今、たいへん心配しているのは、温度管理をしないで余熱を利用するレシピ。塊の牛肉の表面を焼いてからアルミホイルで包んでしばらく置いたり、鶏肉をジッパー付き袋に入れ沸騰したお湯につけて蓋をし、火から下ろしてそのままにして余熱をかけたり。そんなレシピが、インターネットや雑誌等で数々紹介され、『簡単』ともてはやされています」とした上で、前述したように「低温での安全な加熱にはかなり長い時間、温度を維持する必要があります」として「香西委員は『こうした余熱を利用するレシピでは、中心温度が上がりきりません。やめた方がよいですね』と話します」と注意を呼びかけている。
食品安全委員会が公開しているYouTube動画「牛肉の低温調理『安全に美味しく食べ物を調理しよう』」でも、牛肉を低温調理する際は「公式HPやレシピ本を参考にする」「肉の厚さによって時間を伸ばす」「自己流で温度を下げたり時間を短くしたりしない」という3点に気をつけてほしいとしている。