東出昌大「愛って複雑怪奇」 DV詩人役で主演...映画『天上の花』で見せた「人ならざる顔」【インタビュー】

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達治が求めていた「良妻」の像とは?


達也が用意した「耽美な世界」は、必ずしも慶子の理想とは一致しなかったようだ

――作中では前妻や子供のための養育費を支払う一方で、慶子からは家に入れる金が少ないと不満を漏らされるシーンがありますが、正直、達治の稼ぎでは、どちらにも手厚くというのはなかなか難しかったと思います。ただ、その一方で、詩人の佐藤惣之助の葬儀で慶子と再会した際には、「お金には困らせない」的な発言もありました。となると、達治としては、三国での生活が金銭的に苦しくても、「愛」で何とかなるといった思いはあったんでしょうか?

東出:本人が求める「良妻とはこうあるべきだ」という像が実現可能であるとするならば、三国での生活が破綻することはないと達治は考えていたのではないでしょうか。それはすなわち、お金や食べ物がふんだんにある生活というものではなく、「質素倹約を旨とし困窮をものともせず、達治が集めた書や骨董などに囲まれながら慶子が筝を奏でる」といった生活だと台本には記されていました。

――耽美な世界ですね。

東出:つまり、達治としては自身がこだわりを持って集めた品々に囲まれて生きていく中で慶子が満足するという生活を想定していたことになるでしょうか。達治が慶子に言い寄る際に「不自由させない」という趣旨のセリフを言ったのは、達治が言う「豊かさ」を踏まえてのセリフなので、達治は本心でそのセリフを言っていたんです。ただ、慶子は必ずしもそのような生活を想定していたわけではなかったので、いさかいが絶えなかったというのはあると思います。
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