示談応じようとしていた五ノ井里奈さん それを覆した相手側弁護士の一言【自衛隊性暴力問題】

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   陸上自衛隊在職中に性暴力を受けたことを実名で告発していた五ノ井里奈さん(23)が2022年12月19日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見し、加害者3人から示談交渉を打診されていることを明らかにした。

   防衛省は12月15日、加害者の隊員5人を懲戒免職とするなど、男性隊員計9人の処分を発表した。3人は強制わいせつ容疑で書類送検され、一度は不起訴処分になったが、郡山検察審査会(福島県郡山市)が「不起訴不当」とする議決を出し、福島地検が再捜査を進めている。五ノ井さんは10月に加害者から直接の謝罪を受けたことなどを受け、「被害届を取り下げるか、速やかに示談に応じるつもり」でいた。だが、加害者側の弁護士が「個人責任を問われるか疑問がある」との見解を示したことで、五ノ井さんは「重大さを軽く受け止めているのではないかと、あきれ、驚いた」。代理人を通じて改めて見解を求めており、その返答によっては民事訴訟や国賠訴訟も検討する。

  • 日本外国特派員協会で記者会見する五ノ井里奈さん
    日本外国特派員協会で記者会見する五ノ井里奈さん
  • 日本外国特派員協会で記者会見する五ノ井里奈さん

「事の重大さを軽く受け止めているのではないかと、あきれ、驚きました」

   五ノ井さんによると、加害者側の弁護士は「個人責任を問われるか疑問がある」とする一方で「謝罪の意思を表すため」として、1人約30万円の示談金を提示した。この30万円という金額は「痴漢並みの金額」だが、五ノ井さんが「残念に思った」のは、金額よりも「個人責任を問われるか疑問がある」という一言だ。五ノ井さんは

「この直前までは、被害届を取り下げるか、速やかに示談に応じるつもりでいました。しかし、この一言で、事の重大さを軽く受け止めているのではないかと、あきれ、驚きました」

と話した。「加害行為をどう受け止め、どのように責任を取るのか」について見解を求めており、「その回答の結果によって、国を含めて民事訴訟をするか検討したいと思っている」とした。

   加害者に対する防衛省の処分についても言及。実名・顔出しによる告発がなければ、処分は行われなかったとの見方を示した。

「私が実名顔出しをしてメディアに告発して世間が注目しなければ、組織は、懲戒免職という重い処分を下す以前に、事実が隠蔽されたまま、男性隊員たちは平然と別の女性隊員に対して、同じ行為を繰り返していたと思う。実際に私の耳に入ってきている情報もある」

   処分の内容については

「私が所属していた部隊は、セクハラ行為はまるでコミュニケーションの一部のように感覚が麻痺していたので、今回の処分はまっとうだと思う」

などと一定の評価をする一方で、性暴力の現場を目撃していた複数の男性隊員に対する処分がなかったことについて「甘い部分があるのでは」と話した。

「自衛隊全体がそういう人たちではないというのは本当に分かってほしい」

   「今回の防衛省の処分で自衛隊は変わると思いますか」という質問には、「私は変わると信じています」。その理由を次のように述べた。

「そう信じないと告発をした意味がないので...。今回告発した理由のひとつとしても、同じ女性隊員の方が、私のような被害に遭ってほしくないという思いで、告発を選んだので、変わってもらわないと困る。自衛隊全体がそういう人たちではないというのは本当に分かってほしい。中には本当に一生懸命働いている方々がたくさんいる」

   五ノ井さんは幼少期に柔道を始め、中学生の時には出身地の宮城県大会を制したこともある。今後については、今回の体験を伝える講演会や、柔道関係の活動に携わりたい考えだ。

「私の軸としては柔道があるので、柔道を通して、同じ被害に遭われた方と一緒に柔道をして、心も体も強くなれるように、そういう活動をしていきたい」

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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