まるで生きているかのように動く豆がツイッターで大きな注目を集めた。動画には、ことことと動く小さな半月形の豆の様子が収められていた。メキシコトビマメ(メキシカン・ジャンピング・ビーン)と呼ばれる豆で、海外では玩具として売られていることもある。しかし日本では輸入禁止品に該当する可能性が高く、無許可で持ち込むことができないという。
J-CASTニュースは2022年12月16日、横浜植物防疫所に詳細を取材した。
豆がどうして動くの?
ツイッターユーザー・理科教師とらふずく(@raptorial_owlet)さんは7日、「やばいものを手に入れてしまった」として、メキシコトビマメの動画を投稿した。続くツイートでは、掌で温めると盛んに跳びはねる様子が観察できたと述べている。
とらふずくさんは取材に対し、偶然立ち寄った東京近郊の雑貨屋で購入したと明かす。子供のころに読んだ科学雑誌などをきっかけに興味を持っていたそうだが、購入後にインターネットで調べる中で輸入に関する制限を知り、すぐに地域の植物防疫所に相談したそうだ。
豆は、緑がかった黄褐色で大きさは大豆ほど。アサガオやツバキの種に似た形をしているが、表面には模様があったという。動画では小刻みに震えたり、小さく跳ね上がったりしている。この動画は208万回以上再生され、「怖い」「こんなのあるんだねえ」などと驚く声が寄せられている。ツイートは1万1000件を超えるリツイート、3万3000件を超える「いいね」が寄せられた。
メキシコトビマメはなぜ動きまわるのか。取材に対し、回収した横浜植物防疫所は16日、ガの幼虫が寄生した豆であると説明する。中の幼虫が動き回ることで豆自体が動いているように見えるため、海外では玩具として売られているが、日本では輸入禁止品に該当する可能性が高い。
「メキシコトビマメに生きている虫がいることが問題となります。どの種類の虫がいるのかは実際に中を見てみなければ分かりませんが、少なくとも『寄生』という植物を害する状態であることから、検疫の対象となる可能性が非常に高いです」
メキシコトビマメは、虫が混入しているため国外から無許可で持ち込むことはできず、寄生している虫は国内に生息しない病害虫である可能性が高いという。
不思議な植物を見かけたら最寄りの「植物防疫所」へ!
横浜植物防疫所によれば、植物類を輸入する際には輸入者が自ら申告し、輸入検査を受ける必要がある。農業生産物に加害する病害虫が国内に侵入し、増えることを防ぐためだ。検査を受けずに不正に輸入した場合は、植物防疫法に基づき、輸入者に3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科される場合がある(法改定により2023年4月1日からは最大300万円の罰金に引き上げられる)。
しかしメキシコトビマメは、国内で知名度が低く、海外で玩具として販売されており、ただの玩具か植物か、中に生き物がいるのか、事前知識なければ輸入者が判断するのは難しい。横浜植物防疫所は、持ち込みが心配なものがあればできるだけ気軽に相談してほしいと訴える。国内でも気になるものを見かけた際には連絡するよう呼びかける。
「玩具や民芸品などは加工の度合いによっては、検査の対象になります。消毒したり加熱したり粉々になっていれば問題はありませんが、メキシコトビマメであれば跳びはねる状態、虫が生きている状態ではそのまま輸入できません。 不思議なもの、怪しいものを見かけたときには最寄りの植物防疫所にお気軽にご相談ください」
とらふずくさんによれば、メキシコトビマメは購入した雑貨屋の店主が個人的に海外で仕入れた品物だったそうで、今回日本に持ち込まれたメキシコトビマメはすべて回収されていたとのことだ。
横浜植物防疫所によれば、回収されたメキシコトビマメに寄生していた幼虫は、調査を目的に施設内で飼育されているという。幼虫の段階では種類を特定するのが困難なためだ。
「万一、メキシコトビマメらしきものを見かけた際には、虫が飛び出ることがないよう密閉してください。職員が回収しますので、ご自身で処理したり外に捨てたりすることのないようお願いします」
(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)
やばいものを手に入れてしまった。こ pic.twitter.com/wlDllXyCrP
— 理科教師とらふずく (@raptorial_owlet) December 7, 2022