「私たちはお互いが深く関わる機会を徐々に失っていきました」
こうした現代社会における特徴の背景には、(1)人々がお互いにあまり深く立ち入らなくなったこと(2)技術的に進歩したこと――の2点があるという。
石田氏は「個々人の尊重や『人それぞれ』が横行する中、私たちはお互いが深く関わる機会を徐々に失っていきました」といい、「友だち同士も本音で関わるというより、装いを通じて関わる側面が増したので、疲労が蓄積するとリセットするといった現象が一部見られるようになります」と見解を示す。
仮に誰かがリセットしても、互いに深追いすることを避けようとするため、「それはそれで事情があった」などと解釈されやすいという。
技術的な進歩については、SNSといったコミュニケーションツールが浸透すると同時に、「つながりを自身で操作する傾向が高まった」と説明する。SNSでは、友人の範囲や連絡への応答、ブロックなど交流のあり方をある程度操作できる。
石田氏は倍速視聴を例に挙げ、若者の間では「イヤなものは飛ばし、選択しながらよいものを見る習慣が浸透しています」と述べる。「テレビゲームの『リセット』のように、自らボタンを押して操作的に関係を断ち切ることが容易になりつつあるのでしょう」
「人間関係リセット症候群」のメリットやデメリットについて尋ねると、石田氏は「メリット、デメリットという発想自体がリセットにつながるもの」だという。
「利益コストを合理的に判断して、そこに見合わないものは大なたを振るう。イヤなものを避けられるというのはよいのかもしれませんが、長期的に安定を得る、否定的なものとじっくり向き合うということは難しくなるでしょう」