「なんで眠れないんだろう」
開幕2軍で迎えたルーキーイヤーの4月には、外野守備中に左ひざ靭帯損傷の怪我を負った。最終的に1年目の一軍出場はゼロ。秋のフェニックスリーグでも負傷し、貴重なアピールのチャンスを逃した。
「4月の靭帯損傷は、もともと足の状態が悪い中で負ってしまったものです。今思うと、一生懸命やりすぎていたのかなと思います。やっぱり抜くところは抜くというか、うまいことやるのが大事だったんだと思いますが...。自分ができるなりにケアはしていましたが、疲れが取り切れていないことも多かったです」
厳しい競争に勝たなければならない――。そんな意識が、滝野さんを追い詰めていく。
「疲れているのに目が覚めて眠れないという症状が出るようになり、『なんで眠れないんだろう』と思えば思うほど眠れなくなる悪循環にはまっていきました。眠れていない不安は『打てるかな』『今日一日無事に過ごせるかな』という新たな不安につながり、どんどん自分で自分を追い詰めるようになっていました」
1年目の10月には病院を受診し「適応障害」「抑うつ状態」の診断を受けた。就寝時には睡眠導入剤も頼った。「周囲との差を一気に埋めるのは難しい」「一日一歩でも成長できればいい」――。「常に100%」だった気持ちを、現実的なレベルに切り替えるようにした。
2年目の20年にプロ初ヒットを放ち、はじめて開幕一軍を掴んだ21年。「与田(剛)監督に一番チャンスをいただいていた年」と振り返るも、期待には応えられず、38試合の出場で打率1割と低迷した。長く試合に出場していない時期があったことから、一部メディアで「規律違反」を犯したと報じられた。のちに誤報と判明したが、実際には何があったのか。
「新型コロナウイルスのワクチンを打った後から気持ちが落ち込み 、一週間くらい休んでいたんですね。そういう時に報道が出た。僕は何も悪いことをしていなかったので、すぐに球団に連絡しました。でも、精神的に落ちていた時だったんで、そういうことを書かれて、ツイッターとかでも『何したんだ』とか言われたりして...悲しい気持ちにはなりましたね」