「助けてください」――。奈良県生駒市の図書館は2022年12月4日、ツイッターで悲痛な思いを訴えた。求めたのは、入力した文字を紙に出力する「電子タイプライター」の寄贈。所蔵本の背表紙に分類表ラベルを貼るための道具だ。
図書館が寄贈を求めたタイプライターはすでに販売終了し、入手困難になっている。訴えの裏にあった事情とは。
開館当初からタイプライター使用
奈良県北西部にある生駒市は、大阪府に隣接する人口約11万8000人のベッドタウン。市内には5つの図書施設があり、市中部にある本館が最も規模が大きい。
本館では1987年の開館以来、本の背表紙に分類表ラベルを貼るのにタイプライターを活用してきた。今から5年ほど前には、新しい電子タイプライターを導入。生駒市図書館の担当者は2022年12月6日、J-CASTニュースの取材に「日に1~2冊、多いときで5~6冊、修理本や寄贈本にラベルを貼る必要があり、日常的にタイプライターを利用しています」と語る。
しかし、1年ほど前に機器が故障。「紙送りが止まらなくなってしまい、職員が手で紙を押さえながらタイプライターを入力してきました」。買い替えを検討したものの、製品はすでに販売終了。高額な修理費も頭を悩ませた。しかし、替えのインクリボンはまだ手元に残っている。12月4日、「最後の手段」として、図書館のツイッターでこう呼びかけた。
「【助けてください】本の背表紙の分類を示すラベル。このラベルを作るときに図書館で使っている『タイプライター』が壊れてしまいました。販売終了のため購入できず困っています。brother電子タイプライター『WORD SHOT Ⅴ』をお持ちの方がいらっしゃいましたらご寄贈いただけませんか」
「代替品」推す声もあるが...なぜこだわる?
具体的なメーカー、製品名まで指定する徹底ぶり。担当者は「既にタイプライターを使われておられない方も多いのではないかと考え、もしご家庭などで使っていないものがあれば、お譲りいただけないかと思い、投稿しました」と説明する。
しかし、ツイッターユーザーからはこんな声が寄せられる。
「PCじゃだめなん?」
「別のやり方を模索した方がいいのでは」
「新しい代替品にシフトしてゆくべきだとおもう」
こうした指摘に、担当者は「コメントでいただいた『パソコンで文字を打ち出したら』という方法は、それはどちらかと言えば大量に背ラベルを出力する際に有効であって、数冊の本に対応するのには向きません。テプラでは規格が合わない。手書きだと視認性に問題が出る可能性があり、現状はタイプライターを使うしかない状況です」とする。
型違いのタイプライターがあると提案してきた人はいたものの、12月7日時点でまだ寄贈者はいない。もし寄贈者が現れなかった場合は、どうするのだろうか。
「様々な方法を検討した末、寄贈をお願いしました。将来的には他の手段を講じないといけませんので、作業効率や見た目、費用面等を鑑みて、より便利な方法を見つけていきたいと考えます」
【助けてください】
— 生駒市 図書館 (@Ikoma_library) December 4, 2022
本の背表紙の分類を示すラベル。
このラベルを作るときに図書館で使っている「タイプライター」が壊れてしまいました。
販売終了のため購入できず困っています。
brother電子タイプライター「WORD SHOT Ⅴ」をお持ちの方がいらっしゃいましたらご寄贈いただけませんか。 pic.twitter.com/jnLOHpQqic