東京・渋谷駅と池袋駅に掲示中の「受験生にしか見えない」広告がSNS上で話題になっている。
デジタルサイネージ(電子看板)には、まるで壊れたテレビ画面のようなブロックノイズが映し出されている。しかし暗記学習などで用いる「赤シート」を通して見ると、サントリー食品のエナジードリンクブランド「ZONe ENERGY(ゾーン エナジー)」による応援メッセージが浮かび上がる。
企画担当者は2022年12月7日、取材に対し、文字の見え方を調整するために何度も試行を重ねたと明かす。
「赤シート、可能性の塊すぎる」
多くの大学受験生は、11日に年内最後の大学受験用模擬試験、約1か月後には大学共通試験を控えている。ZONeは5日から11日にかけて、移動時間にも赤シートを用いて追い込み勉強を続ける受験生を応援したいと、大手予備校が集う両駅にメッセージ広告を掲出した。
ツイッターでは、広告に携わった人気クリエイター・もにゃゐずみさんが次のように紹介した。
「"赤シート"の性質を駅ビジョンに転用してみた結果、駅中がこんなんなってます......。
赤シート、可能性の塊すぎる」
ツイートに添えられた動画には、デジタルサイネージが並ぶ駅構内の様子が映されている。その全ての液晶画面でブロックノイズがちらついており、まるで駅中の広告が壊れてしまったような雰囲気を放つ。そのうちの1つに半透明の赤シートをかざすと、「これを見ている君に幸あれ」などの応援メッセージがくっきりと浮かび上がる。
ツイートには「こういう仕掛け大好き」「良いところに目をつけたなぁ」などと感心する声が寄せられ、約1万3000件を超えるリツイート、4万9000件を超える「いいね」が寄せられる大きな反響があった。
赤シートを持っていない受験生や受験生ではない一般の人々に向けては5日、渋谷駅周辺で赤シート4000枚とサンプル商品「ZONe ENERGY」5800缶の配布が行われた。サンプルを受け取ったとするユーザーからも驚きの声があがっている。
「その背中を押すような広告が作りたいと思いました」
ZONeの広告企画担当者は取材に対し、広告を作ったきっかけについて次のように振り返る。
担当者は、電車で赤シートを活用して勉強する学生たちを見て、「大半がスマホを眺めている中、明らかに違う集中力を醸し出している」と感じたという。「大人たちの隙間を、単語帳を小脇に足早に歩いていく様子」に目を奪われ、こんな思いが浮かんだ。
「ある日の電車内で、同じように必死に勉強していた学生が、ふと単語帳から目を離し、虚空を見つめてしばらくじっとしていました。何を考えていたのか、何を思っていたのか。
思えばもう間も無く、本格的な受験シーズンです。
その背中を押すような広告が作りたいと思いました」
受験生が手にしていた「赤シート」を活用した広告を作る上で苦労したのは、その「見え方」だった。
「赤シートをかざした時だけメッセージが浮かび上がる、というビジュアルの仕組みづくりについて、過去に前例のない取り組みであったため、かなりの数の試行を重ねる必要がありました。例えば色味を少し変えるだけで、赤シートをかざした際の見え方が大きく変化するため、最終形に至るまで、チームの皆で微調整を繰り返しました」
掲載する応援メッセージは、東大卒の動画配信者・河野玄斗さん、ヨビノリたくみさん、現役名古屋大学生の動画配信者・ぴけさんの3人に依頼した。担当者は「勉強と向き合う上で頼れる存在となる先生から、受験生にとって最も近い存在である大学生まで、受験生たちにとってモチベーションになる方々」だと述べる。
改めて担当者が受験生に伝えたいこと
サンプルと赤シートを配布した渋谷駅では5日、駅を利用する多くの学生が広告を楽しむ様子が見られたという。
「その場でサイネージに赤シートをかざし、ビジュアルのギミック自体に対して『面白い!』と仲間同士で楽しんでいただくこともあれば、浮かび上がったメッセージを真剣な眼差しで見つめる方々もいらっしゃいました。この広告が様々な発話のきっかけになっていることが感じられました」
さらにSNS上では現役受験生から「これは勇気づけられる」といったポジティブな声も寄せられたとし、「緊張感が高まるこのタイミングで少しでも自信を持っていただけたのだとしたら本望です」と受け止め、次のような応援メッセージを寄せた。
「受験の環境も世の中も先の見えにくい昨今ですが、自分のやりたいことや目標だけは見失わず、たまにやってくる不安な気持ちにも負けず、どうか乗り越えて欲しいと願います。 一人でも多くの受験生に、少しでもエナジーを届けられたら嬉しいです」