2022年の最優秀鉄道車両は「京急の通勤型」 どんな特徴が?社長が語った魅力とは

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   最も優秀な鉄道車両に毎年贈られる「ブルーリボン賞」が京浜急行電鉄の1000形1890番台 「Le Ciel」(ル・シエル) に贈られ、2022年12月5日に京急蒲田駅(東京都大田区)で受賞式が行われた。

   ブルーリボン賞は、純然たる「新型車両」に贈られることが多く、特にここ数年は、特急向けに開発された車両が選ばれる傾向が強かった。だが、今回受賞した1000形1890番台は、名前からも分かるように、従来から活躍してきた形式の派生形で、主に通勤用として使用される車両だ。京急の川俣幸宏社長は、受賞車両について「ゆったり快適に移動していただける、新たな価値の中で十分活躍してもらえるのでは」。

  • 「ブルーリボン賞」を受賞した京浜急行電鉄の1000形1890番台 「Le Ciel」(ル・シエル)。京急蒲田駅で行われた受賞式ではテープカットが行われた
    「ブルーリボン賞」を受賞した京浜急行電鉄の1000形1890番台 「Le Ciel」(ル・シエル)。京急蒲田駅で行われた受賞式ではテープカットが行われた
  • 1000形1890番台は2021年にお目見えした
    1000形1890番台は2021年にお目見えした
  • 車内にも「ブルーリボン賞」のプレートが入った
    車内にも「ブルーリボン賞」のプレートが入った
  • 側面にも「ブルーリボン賞」の文字が入った
    側面にも「ブルーリボン賞」の文字が入った
  • 有楽町・副都心線を走る17000系(左)と半蔵門線を走る18000系 (右)。ローレル賞の授賞式で、初めて2種類の車両が並んだ
    有楽町・副都心線を走る17000系(左)と半蔵門線を走る18000系 (右)。ローレル賞の授賞式で、初めて2種類の車両が並んだ
  • 車内の「ローレル賞」のプレート
    車内の「ローレル賞」のプレート
  • 新木場車両基地には、多くの車両が一堂に会した
    新木場車両基地には、多くの車両が一堂に会した
  • 手前が17000系、奥が18000系
    手前が17000系、奥が18000系
  • 「ブルーリボン賞」を受賞した京浜急行電鉄の1000形1890番台 「Le Ciel」(ル・シエル)。京急蒲田駅で行われた受賞式ではテープカットが行われた
  • 1000形1890番台は2021年にお目見えした
  • 車内にも「ブルーリボン賞」のプレートが入った
  • 側面にも「ブルーリボン賞」の文字が入った
  • 有楽町・副都心線を走る17000系(左)と半蔵門線を走る18000系 (右)。ローレル賞の授賞式で、初めて2種類の車両が並んだ
  • 車内の「ローレル賞」のプレート
  • 新木場車両基地には、多くの車両が一堂に会した
  • 手前が17000系、奥が18000系

会員投票で51.6%の支持を得る

   ブルーリボン賞は全国の鉄道愛好家らでつくる「鉄道友の会」が創設。1958年の初回は、小田急電鉄の初代ロマンスカー「SE」として知られる3000系に贈られた。最近は特急型の受賞が続いており、21年は近畿日本鉄道の80000系「ひのとり」、20年は西武鉄道の001系「Laview」(ラビュー)、19年は小田急電鉄のロマンスカー「GSE」として知られる70000形、といった具合だ。最後に通勤型に近い車両が受賞したのは17年で、蓄電池を搭載し、「DENCHA」(デンチャ)の愛称で知られるJR九州のBEC819系だった。

   今回選考の対象になったのは、21年に「日本国内で営業運転を正式に開始した新造および改造車両」。選考委員長の加藤幸弘氏によると、20系列・形式が該当し、そのうち5系列・形式が候補として推薦された。その上で会員からの投票や選考委員会による審議で受賞車両を決めた。投票では、1000形1890番台の支持率が51.6%に達したという。

   現行の1000形は1959年に登場した「初代1000形」の後を継ぐ形で02年にアルミ製車両が登場し、07年からステンレス車として製造が続いている。今回受賞した1000形1890番台は、その派生形だ。ロングシートとクロスシートを切り替えられる機能(L/C腰掛)や、トイレを京急としては初めて備えたのが特徴だ。

L/C腰掛は別に珍しくないが...

   この2つの特徴で、様々なニーズに応えられるようになった点が主に評価された。ロングシートは都市部の通勤電車で一般的で、クロスシートは郊外型電車に多い。有料特急ではクロスシートで運行し、それ以外は混雑の度合いによってロングシートとクロスシートを使い分ける。貸切列車の場合、両シートを組み合わせて車座のような配置にすることもできる。もっとも、L/C腰掛は関西や関東の他の私鉄でも備えている車両があるため、特段珍しいわけではない。

   特別なのは後者。1000形1890番台は4両編成で、2号車にバリアフリーの洋式トイレ、3号車に男性用トイレを設置。車両の半分にトイレがついていることになる。ビール列車のような、時間をかけて運行するイベント列車で特に重宝される設備だ。

   京急の川俣社長は授賞式のあいさつで、コロナ禍を経て、利用者の移動についての価値観が変化したことを指摘。具体的には、次のように述べた。

「ラッシュでぎゅうぎゅう詰めになりながら高速で移動するということが果たしていいのだろうかと...、少しゆったりと、少し快適に移動するということも必要なのではないかと...、こんなことを皆さん、価値観として持ち始めているのではないか」

   こういった背景を踏まえ、受賞車両の魅力を

「ゆったり快適に移動していただける、新たな価値の中で十分活躍してもらえるのでは」

とアピールした。

東京メトロ17000系・18000系を並べて「ローレル賞」授賞式

   次点にあたる「ローレル賞」は、東京メトロの17000系・18000系、京阪電気鉄道の3850形に贈られた。12月3日には、東京・新木場の東京メトロの車両基地で、17000系・18000系を並べて受賞式が行われた。両形式は、従来の車両に比べてバリアフリーを進め、脱線検知装置遠隔監視するシステムを導入。安全性も高めたのが特徴だ。

   17000系は有楽町・副都心線を走るのに対して、18000系は半蔵門線を走る。仕様の大半を共通にして整備をしやすくする一方で、17000系は有楽町線・副都心線の色彩(ゴールド・ブラウン)で「シャープでエレガント」な装いなのに対して、18000系は、半蔵門線のパープルの色彩で、全体的に丸みを帯びたデザインだ。サービスや機器のレベルが向上し、「2系列に対して基本仕様の共通化と投入線区の独自性の両面を実現した」点が評価された。

   鷺沼車両基地(川崎市)が拠点の18000系が新木場に乗り入れるのは初めてで、鉄道ファンの注目を集めたイベントだ。東京メトロでは、18000系が移動したルートは非公開だとしている。ただ、目撃情報を総合すると、東急田園都市線、大井町線、目黒線を経由して東京メトロ南北線に入り、市ヶ谷駅付近にある連絡線から有楽町線に入ったようだ。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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