L/C腰掛は別に珍しくないが...
この2つの特徴で、様々なニーズに応えられるようになった点が主に評価された。ロングシートは都市部の通勤電車で一般的で、クロスシートは郊外型電車に多い。有料特急ではクロスシートで運行し、それ以外は混雑の度合いによってロングシートとクロスシートを使い分ける。貸切列車の場合、両シートを組み合わせて車座のような配置にすることもできる。もっとも、L/C腰掛は関西や関東の他の私鉄でも備えている車両があるため、特段珍しいわけではない。
特別なのは後者。1000形1890番台は4両編成で、2号車にバリアフリーの洋式トイレ、3号車に男性用トイレを設置。車両の半分にトイレがついていることになる。ビール列車のような、時間をかけて運行するイベント列車で特に重宝される設備だ。
京急の川俣社長は授賞式のあいさつで、コロナ禍を経て、利用者の移動についての価値観が変化したことを指摘。具体的には、次のように述べた。
「ラッシュでぎゅうぎゅう詰めになりながら高速で移動するということが果たしていいのだろうかと...、少しゆったりと、少し快適に移動するということも必要なのではないかと...、こんなことを皆さん、価値観として持ち始めているのではないか」
こういった背景を踏まえ、受賞車両の魅力を
「ゆったり快適に移動していただける、新たな価値の中で十分活躍してもらえるのでは」
とアピールした。