学生や研究者向けイベントに設置された写真撮影用パネルが秀逸だと、SNSで注目が集まっている。パネルを背に自撮りをすると出張の証明に便利だという。
話題になったのは、2022年11月30日から12月2日にかけて幕張メッセで開催されている「第45回日本分子生物学会年会」(MBSJ2022)に設けられたパネルだ。
「大学の出張の仕組みをわかってらっしゃる」
日本分子生物学会年会は、日本分子生物学会が主催し、日本生物物理学会が共催している。J-CASTニュースは、イベントの事務局を担うエー・イー企画(東京都千代田区)を通して、運営する組織委員に取材した。
イベントは研究者と学生が発表や交流する場であり、組織委員によれば「生物学分野で最大の学術集会の年次集会(いわゆる学会)」だという。新型コロナウイルス感染症が拡大する前までは7000人から8000人ほどが来場したという。今年は約6000人の来場を見込んでいる。
「分子生物学は多種多様な研究対象・方法・領域にまたがる幅広い学問分野ですので、参加者間の交流を促進するための数多くの工夫・企画を行っています」
SNSでは会場に展示されたパネル「出張申請用 写真撮影看板」に注目が集まっている。パネルには催事名や会期、会場などが記されている。等身大の人型ピクトグラムの前に立って自撮りをすると、出張に訪れていたことが証明できるという。
下部には、深川竜郎・年会長(大阪大学大学院生命機能研究科)の文責で、次のような一文がある。
「本看板は上記の催事会期中に催事会場に設置されていたことを証明します。」
ツイッターでは、参加者たちがパネルを「公式さんが準備した学会参加証明システムが合理的すぎて草」「大学の出張の仕組みをわかってらっしゃる」などと評している。こうした参加者たちの投稿が拡散され、一般のユーザーの間でも「運営側も参加者も手間がかからずみんなハッピー!」「物理で解決!」「観光地の顔出しパネルみたい」などと話題になった。
パネルを紹介する投稿の中には、1万1000件を超えるリツイート、3万1000件を超える「いいね」が寄せられる大きな反響を呼ぶものもあった。
組織委員会「2分で作ったものです」
どうやって話題のパネルが生まれたのか。イベント組織委員会はパネルを制作した経緯を次のように説明する。
「当初今回のイベントではフォトスポット・看板を2つ作成する予定でしたが、会期間際に会場のスペースの関係上3種類目を作成しなくてはいけない事態になりました。急いで作らないといけないというプレッシャーのなかで、1つ目、2つ目とテイストが異なるものとして2分で作ったものです」
1つ目の看板は、イベントをテーマにしたイラストが描かれている。パネル手前には「#MBSJ2022」という立体のロゴも掲示されており、ロゴとパネルの間で撮影することができる。2つ目の看板もイベントをテーマにしたイラストが描かれているが、こちらは顔出しパネルになっている。
2分で思いついた3番目の看板がSNSで大きな注目を受けたことについては、やや複雑な心境を明かす。
「1つ目のフォトスポットの方がお金がかかっているのでそっちの方が目立って欲しいところではあります」
一方で、次のようなコメントも寄せた。
「看板の3つ目のアイデアが2分で出てきてラッキー、くらいでつくっていました。が、今振り返ってみると研究者層の心のスキマにハマる要素があったように思います!」
出張証明としての効力については、「旅行者の各所属機関の規則・規定に則った判断がなされるものと承知しております」と推測する。会場では楽しそうにパネルを撮影する人々がかなり多くいたそうで、看板にとってはフォトスポット冥利に尽きるだろうと受け止めた。