中国の江沢民元国家主席(元中国共産党総書記)が2022年11月30日、白血病と多臓器不全で死去したと中国国営メディアが報じた。96歳だった。江氏は鄧小平氏が敷いた改革開放路線を踏襲し、私営企業家の共産党入党に道を開いた「3つの代表」を提唱したことで知られる。
江氏の死去は11年7月にも報じられた。香港の老舗テレビ局だったATV(亜洲電視=16年放送停止)と産経新聞による誤報だったが、江氏が本当に死去したことで、11年前の出来事を思い出す向きもあるようだ。
全国紙では産経だけ「1面トップ」
12月1日の全国紙5紙の紙面(東京本社最終版)を比較すると、全5紙が江氏の死去を1面で伝えたが、トップ項目だったのは産経のみ。残り4紙は左上の「肩」と呼ばれる2番手の扱いだった。
産経は2面、3面、9面に関連記事を展開。特に9面の記事では海外の報道ぶりを伝える内容だ。ツイッター上では11年前の誤報のスクリーンショットを流す人もいたが、産経が紙面で誤報に言及することはなかった。
産経は11年7月7日、「江沢民氏が死去」の見出しで電子版の号外を発行。この日の大阪本社の夕刊でも死去を報じた。7月7日時点で新華社通信が、死去は「完全なうわさ」だとする記事を出したが、産経は翌7月8日の東京本社版朝刊でも死去を報道。ただ、書きぶりは号外の「6日夕、北京で死去したことが7日、分かった」から、「6日夕、北京市内の病院で死去したもようだ」にトーンダウン。中国側が死去を否定していることを盛り込む一方で、
「生命維持装置などを使って心肺停止状態の江氏に『延命工作』を施している可能性もある」
とも解説し、死去したとの主張を維持した。
3か月後に誤報認めて「おわび」
産経が誤報を認めてウェブサイトに「おわび」を出したのは3か月後の10月9日。この日行われた辛亥革命100年の記念式典に、江氏が出席していた。翌10月10日付の経緯を説明する記事では、死去したとの情報を「有力な日中関係筋などから」得る一方で、入院先とされた病院に目立った変化がないなど、死去に否定的な情報も入っていた。それでも
「東京編集局で情勢を全般的に分析した結果、江氏が『死去』したと判断」
した結果、死去を報じたと説明。その上で
「結果的に、今回の報道では、情報をより精密に確認する慎重さが足りなかったことで、誤報を招いてしまいました」
と陳謝した。10月13日には熊坂隆光代表取締役社長(当時)ら3役員を減俸処分にしている。
江氏の容体をめぐっては、香港ATVが産経より1日早い7月6日に「病死」したと報じ、後に撤回。12月には当局から罰金を科されている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)