大手飲料メーカー伊藤園(東京都渋谷区)が販売する「健康ミネラルむぎ茶」が赤ちゃん用にも使えるとして、ツイッター上で話題になった。実際、公式サイトにも「離乳食が始まっていれば、赤ちゃんにもお飲みいただけます」と記されている。取材を進めると、他社の麦茶でも離乳食が始まった赤ちゃんが飲める物があった。
一方、麦茶の中には「ベビー用」であることを明示した商品が複数社から販売されている。一般的な麦茶と何が違うのか。複数のメーカーに詳しい話を聞いた。
伊藤園広報「離乳食が始まっているお子様から問題なくお飲み頂けます」
「健康ミネラルむぎ茶」のツイートがあったのは2022年11月8日。「乳児用規格適用食品と同等の管理をしています」というパッケージ表記に着目し、赤ちゃん用として使ったという投稿だった。
ツイッター上では「早速今日スーパーで買ってきます」「もっと早く知りたかった」などのコメントが寄せられている一方で、一部から「乳幼児規格適用食品とは放射線基準のことだから乳幼児用食品ではない」「お湯で薄めて冷ましてね」などの声も上がっていた。
伊藤園や厚生労働省のウェブサイトなどによれば、「乳児用規格適用食品」とは、厚労省が設けた食品中の放射性物質の基準値において、一般食品よりも低い基準値が適用されている1歳未満の子供を対象にした食品のことだ。
同社広報によると、「健康ミネラルむぎ茶」「香り薫るむぎ茶 ティーバッグ」シリーズの商品は全て「乳児用規格適用食品と同等の管理をしております」と書かれている。この表記がある「健康ミネラルむぎ茶」のペットボトルは、2017年3月頃から販売を開始しており、全国のコンビニやスーパーで購入できる。「健康ミネラルむぎ茶」には「製品に含まれるアレルギー物質(28品目中)無し」とも明記されている。
1歳未満の子どもも対象としている製品に「乳児用規格適用食品」と表示していたが、利用者の年代が幅広くなったため、1歳未満の子どもを対象にしつつ、1歳以上の利用者も対象とした「乳児用規格適用食品と同等の管理」という表記に変更しているという。
「乳幼児用食品ではない」という指摘に関して、「健康ミネラルむぎ茶」は乳児の飲み物として使えるかを尋ねると、広報は「お使いいただけます。麦茶はカフェインを含まないお茶なので離乳食が始まっているお子様から問題なくお飲み頂けます」と回答した。さらに「生後1か月頃の乳児」でも飲むことができるという。
「健康ミネラルむぎ茶 こどもむぎ茶」は何が違う?
一方、伊藤園は「生後1か月頃から」と明記された「健康ミネラルむぎ茶 こどもむぎ茶」も販売している。「健康ミネラルむぎ茶」が生後1か月でも飲めるなら、「こどもむぎ茶」は何が違うのか。
同社広報は、「健康ミネラルむぎ茶」が、
「赤ちゃんからお年寄りまで幅広い年齢層においしく飲んで頂けるように、やかんで煮出したような『甘くて、香ばしい』味わいの麦茶に仕上げております」
としたのに対し、「こどもむぎ茶」は、
「赤ちゃん向けの味わいに仕上げています。生後1か月頃の赤ちゃんからおいしく飲んで頂ける麦由来の『甘さ』を特徴としております」
と違いを説明した。なお「健康ミネラルむぎ茶」を離乳食を始めた乳児や生後1か月の乳児に飲ませる場合、どちらの場合でも「気になる方は、初めは2~3倍に薄めて様子を見ながらあげると良いと思います」と付言している。
また、生後1か月の乳児が飲む麦茶は、「離乳前は、基本的に母乳、ミルクで栄養と充分な水分補給ができている」とし、補助的な水分補給になるとしている。
他のメーカーの麦茶は?
麦茶は他社でも製造販売している。「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶」を販売するサントリー食品インターナショナル(東京都港区)と、「十六茶麦茶」を販売するアサヒ飲料(東京都墨田区)にも、(1)離乳食が始まった乳児に飲ませることができるか(2)生後1か月から飲ませることはできるか――について取材した。
サントリー食品インターナショナル広報は11日、「やさしい麦茶」は「離乳食を始めて色々なものを口にしたお子様への飲用は問題ございません」と回答。「必要に応じて、お好みに合わせて薄めるなどしてお飲みください」と付言している。同商品もアレルギー特定原材料等28品目を使用していない。
生後1か月から飲むことについては、「清涼飲料水ですので、特別お子様が飲んではいけないような成分は入っておりませんが、離乳食を始める前の赤ちゃんにおすすめはしておりません」としている。
アサヒ飲料は14日、アサヒグループ広報を通じて、「十六茶麦茶」は「乳児用規格適用食品ですので、離乳食を始められた頃からご飲用いただけます」と回答した。「お味が濃いとお感じになられる可能性もありますので、水で薄めて様子をみてください」と付言している。
生後1か月から飲むことについては、「特定アレルゲン28品目は不使用ですが、生後1M(編集部注:1か月)のお子様の飲用はお客様判断となります」と答え、「当社としては、離乳食を始める頃からの飲用をおすすめしております」としている。
「ベビー用麦茶」は何が違う?
上記3社とも、製造している麦茶は「離乳食を始めた子ども」も飲めるという回答だった。一方、伊藤園以外にも生後1か月頃から飲める麦茶として「ベビー用」と表記している商品がある。一般的な麦茶とどのように異なるのか。アサヒグループ食品で「ベビーのじかん むぎ茶」を販売する和光堂と、「ベビー麦茶」を販売するピジョン(東京都中央区)に取材した。
和光堂は14日、アサヒグループ広報を通じて、まずベビー用に製造する麦茶の総称があるかについて「特に法規上の取決めはございませんので、統一表現はございません」としつつも、「日本ベビーフード協議会では『ベビー飲料』と表現されております」と回答した。
日本ベビーフード協議会とは、公式サイトなどによれば、日本国内でベビーフードを製造・販売している企業5社が運営し、「安心して赤ちゃんに召し上がっていただけるよう、ベビーフードの品質向上を目指した」活動をしている団体だ。和光堂やピジョン、江崎グリコ、キユーピー、雪印ビーンスタークの5社が運営している。
和光堂は、同社商品の赤ちゃん用麦茶が一般的な麦茶と違う点について、「日本ベビーフード協議会の定める『ベビー飲料自主規格』に準じて商品設計しております」と回答。風味は「苦味をおさえ、赤ちゃんに飲みやすく仕上げております」としている。
日本ベビーフード協議会は公式サイトに、詳細な「ベビー飲料自主規格」を掲載している。抜粋版では「カフェイン量を極力少なくしたお茶飲料」「最小限かつ限定された食品添加物の使用」などいくつかの項目でまとめている。
ピジョンも15日、ベビー用麦茶の総称について「特に決まりはございません」とした上で、同社商品名は「ベビー飲料自主規格」における(1)食品の内容を分かりやすく表現した商品名を表示する(2)「ベビー飲料」と表示すること。ただし、社名等を冠した『○○ベビー飲料』と表示してもよい――というルールに則って表記していると回答した。商品名の「ベビー麦茶」を一般名称として使うケースも多いという。
一般的な麦茶との違いについて、ピジョンの赤ちゃん用麦茶商品も「日本ベビーフード協議会の自主規格に則り、製品の企画・開発・生産をしております」としている。また同社は「乳児用規格適用食品」の基準も満たしており、その表記もあるという。