睨むような女の子の絵で世界的に知られる美術作家・奈良美智さん(62)が2022年11月21日、10年以上前に無償で絵を描いた飲食店の扉がオークションに出品されていたとして、「時々こういうのがあると人が思う以上に落ち込みます」とツイッターで嘆いた。
「せめて僕が死んでからにしてくれ」
奈良さんの作品をめぐっては、オークションハウス・サザビーズ香港で2019年に約2490万ドルで落札された「Knife Behind Back」をはじめ、この数年は数千万円から十数億円ほどの高値の取引がたびたび報じられている。
奈良さんが21日の投稿でオークションに出品されていたと報告したのは、自身が高校時代まで過ごした青森・弘前で2006年に展覧会を実施した際に「人に紹介されて行った食堂の扉に描いたもの」。
添付された写真をみると、ペンで手書きしたような絵の描かれたトイレの扉が、美術展示場に置かれている様子だ。トイレの表札がある面には山の麓に笑顔で佇む女の子と男の子、扉の裏面には「TELL ME WHY」という台詞と共に険しい表情でギターを弾き鳴らす女の子が表現されている。奈良さんは次のように心境を伝えた。
「僕は人が思う以上にある時期からずっと人間不信です。嫌なことは忘れやすい性格なのだけど、時々こういうのがあると人が思う以上に落ち込みます」
「人を信じて何回裏切られたか数え切れない~~~」
続く投稿では、販売したものがオークションに出品されるのは構わないが、「無償で描いたものが売りに出されてるのを見るのは辛い」とし、
「そもそもそれらは作品ではないし、お金に換えられないものとして残したものだ。せめて僕が死んでからにしてくれ」
と考えを述べる。ファンから美術館に寄贈してほしかったという声が寄せられると、奈良さんは「大金が欲しいだけなんだと思います。せめて連絡くれたならとか思うけど」と応じる。扉が出品されるオークションハウス・ラベネル台北のサイトによると、開催は12月4日、見積もり価格は約30万〜56万ドルだという(22日時点)。
一方で、奈良さんは1997年に描いた絵を引き合いに「オークションに自分でも忘れてたドローイングが出てくると再会を嬉しく思うが...」「懐いね」ともいう。