「デリソフター」が開発された背景
デリソフターは、介護食アドバイザーの水野時枝さんと小川恵さんがそれぞれの家庭の経験をもとに共同で発案したものだ。
徳之島の大家族で育った水野さんの祖母・本郷かまとさんは、かつて世界最高齢者としてギネス記録を持っていた。116歳でこの世を去るまで、家族の手料理をほかの家族と同じように食べ続けていたという。水野さんは「そんな祖母を見ていると、人生最期まで家族と同じ食事を食べられる事は人生最大の喜びだと言う想いを持っていました」と振り返る。
小川さんは2015年、誤嚥性肺炎によって嚥下障害となった父の介護食づくりに直面した。このとき、介護食は刻んだりペーストにしたりするのに時間がかかる上、作れない時に市販品を購入するとかなりの金額がかかると実感したという。
そこで2人は、パナソニック社内のビジネスコンテスト「新規事業ゲームチェンジャーカタパルト」に介護食調理器のアイデアを応募。見事に勝ち抜き、デリソフターの製品化を実現した。
苦労したのは、見た目を変えずに筋切りができる「デリカッター」の開発だったという。デリカッターは、熱と蒸気の通り道をつくるもので、「短時間での加圧水蒸調理」の実現に不可欠だ。
水野さんと小川さんは「フォークから始まり軟化のデータ取りに時間を要しました。実際にパナソニックアプライアンス社の社員食堂メニューを日々実験して、軟化とカタチの写真取りを手分けして取り組みました」と振り返った。