「失われた食べ物の『形』がとても重要だった」
取材に対し宮下教授は、ギフモのプレゼンテーションにも感銘を受けたと述べる。フードテックグランプリには、ギフモの森實将(もりざね・まさる)代表取締役社長が登壇した。営業活動で見聞きした話や開発者の体験談をもとに、介護食の抱える問題を紹介していたそうだ。
「僕自身も聴衆として泣いてしまうぐらい感動的なプレゼンテーションでした。きざみ食やソフト食を作るのには手間ひまがかかる上に、それを食卓に出しても『なぜ自分だけそんなものを食べなければならないのか』と怒鳴られて喧嘩になったりするというのです」(宮下教授)
一般的な介護食は、ミキサーなどで砕いた専用のもので、家族の料理とは別に作られる。しかしその外見で食欲を失ってしまう人もいるという。手間暇をかけて料理した人も、食べる人にもストレスがかかってしまうというのだ。
「工学的に問題解決を考えると『咀嚼や嚥下が難しいなら、ミキサーで砕いたり刻んだりしてまた固めれば良い』と安易になりがちです。ですが、それで失われた食べ物の『形』がとても重要だったわけです。フードテックというのは、単に問題解決を行うだけでなく、人を幸せにする技術であるべきだと強く感じました」(宮下教授)
宮下教授の投稿は1万3000件のリツイート、2万9000件の「いいね」が寄せられる反響を呼び、「介護現場でも導入出来れば喫食率が上がりそう!」「見た目変わらず柔らかくするっていい!」などと期待の声があがった。
ギフモの森實代表によれば、SNSでの反響をきっかけに同社のウェブサイトは平常時の50倍以上のアクセスを記録。問い合わせも増加したという。
「SNSに寄せられたコメントを拝見し、技術面や家電ハードウェアへの関心よりも、やわらかく食べやすい料理を『つくる人』『食べる人』双方のお困り事やデリソフターがもたらす価値に共感いただく声が非常に多く感動しました」