「それぞれのメディアや個人の好みです」
まず、飯間氏は「どれが正しい表記なのか」というという問いに答えることは難しいとしつつも、代表的な語形はいくつか存在すると指摘した。
「私の携わる『三省堂国語辞典』では、2008年の第6版で『ボ(ー)ジョレ ヌーボー』を新規に追加し、『ボ(ー)ジョレー ヌーボー』の形も添えました。つまり、4通りの語形を示したわけですが、気持ちとしては『ボージョレ』を主にしていました。新聞の表記が念頭にありました」
次に、飯間氏はこれらの複数の表記について、その使われ方の各時代におけるトレンドについて説明した。
「一方、世の中では『ボージョレ』は比較的古く、今は『ボジョレー』が多いですね。コラムニストの泉麻人さんは、1990年に『ボージョレー』と書いていますが、翌91年には『ボジョレー』としています。今年刊行の『三省堂国語辞典』第8版も、『ボー』と伸ばさない『ボジョレ(ー) ヌーボー』を主としました。世の中に合わせたのです」
最後に、飯間氏は複数の表記が乱立してしまう根本的な理由について説明した。
「どれが正しいかは、結局決められません。フランス語では母音の長短を区別しないので、要はそれぞれのメディアや個人の好みです。また、『ヴ』は通常使わない文字ですが、『ヌーヴォー』としたければ、それもいい。日本語では『ハロウィン』『ハロウィーン』の両方とも言えるなど、多様性があるのです」
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)