北朝鮮が弾道ミサイルを相次いで発射する中、岸田文雄首相は国会答弁の中で、核シェルターについて「現実的に対策を講じていく必要がある」として、検討を進める考えを表明している。
ただ、核シェルターをめぐる議論は「古くて新しい」問題だ。政府は3年前の質問主意書に対する答弁で「諸外国の調査も行うなどして、検討を進めている」としていた。2022年11月16日の国会審議でも、整備を求める声に対して「検討を進めている」と答弁。実質的な進展は見通せない状況だ。
日本の普及率は0.02%
NPO法人「日本核シェルター協会」の14年の発表によれば、スイスとイスラエルの核シェルター普及率は100%で、ノルウェー98%、アメリカ82%、ロシア78%、イギリス67%と高水準なのに対して、日本は0.02%にとどまる。
政府は、弾道ミサイル攻撃による爆風などによる被害を軽減させるための一時的な避難先として「緊急一時避難施設」の指定を進めている。例えば全国にある地下駅舎のうち、20年4月に「緊急一時避難施設」に指定された駅はゼロだったが、22年10月には516か所が指定されている。ただ、これらの施設は放射性物質を避けられるほどの機密性が高いとは言えない。
明示的に「核シェルター」の整備を求める声もあがっている。例えば立憲民主党の熊谷裕人参院議員が19年12月に提出した質問主意書では、
「政府主導で核シェルターの普及のための検討をはじめるべきではないか」
と質問している。政府は「『核シェルター』について確立した定義はないと承知している」とした上で、
「内閣官房を中心とした関係省庁においては、現在、避難施設の在り方に関し、一定期間滞在可能な施設とする場合における必要な機能や課題等について、諸外国の調査も行うなどして、検討を進めているところである」
などと答弁していた。
官房長官は1か月前の首相答弁をなぞる
それからまもなく3年。22年11月16日の衆院内閣委で、立憲の太栄志衆院議員が「ずっと検討ばかりで結局どういった状況になったのか、進展があるのかどうか」と確認したのに対して、松野博一官房長官が答弁したのは、やはり「検討」だった。
「核攻撃等の、より過酷な攻撃を想定した施設については、北朝鮮の情勢等を鑑みれば、現実的に対策を講じていく必要があるとの問題意識を持っており、一定期間滞在可能な施設とする場合に必要な機能や課題について検討を進めているところだ。今後については、こうした設備に求められる仕様や設備に要求される性能等について、様々な視点から調査および検討を行うことを考えており、引き続きしっかりと取り組んでいきたい」
松野氏の答弁は、1か月以上前の岸田氏の答弁と、ほとんど同じ内容だ。10月17日の衆院予算委で、立憲の岡田克也幹事長が
「もちろん限界はあると思うが、中枢の機能はきちんと維持されるようにしなければならないと思う」
などと核シェルターの必要性を指摘。年末に予定される国家安全保障戦略の改定作業の中でも議論すべきだとした。岸田氏は
「北朝鮮の情勢等を鑑みれば、これは現実的に対策を講じていく必要があるという問題意識を持っている。諸外国の調査を行うなどして、必要な機能や課題について検討を進めているところだ」
「新たな国家安全保障戦略等の策定に当たっても 避難施設の確保を含む 国民保護のあり方、これは議論しなければいけない重要な課題であると認識している」
などと答弁していた。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)