歌手でもある日本維新の会の中条きよし参院議員(76)が、参院での質疑で自身の新曲について「お買い求め下さい」とPRするなどしたことについて、同僚議員から「不穏当」との指摘が上がり、ツイッター上でも疑問の声が出ている。
これに対し、中条氏の事務所では、「本人は、これを最後に芸能界を引退して、新たに国会の舞台で仕事をしたいと言いたかったということです」としたが、発言は「まずかったと気づいて反省しています」といい、謝罪の意を示したとしている。国会では、宣伝の扱いについてはどうなっているのだろうか。
ディナーショーも開くとして、「ぜひ機会がございましたら」
「もう時間だということなので、最後になりますけれども、私の新曲がですね、9月の7日に出ております」
中条氏は、2022年11月15日の参院文教科学委員会で、コロナ禍で困窮する歌手らへの支援などについて国の考えをただし、質疑の最後に時計を見上げる仕草を見せた後、こう切り出した。
昭和の匂いがする「カサブランカ浪漫」という曲だとして、「ぜひお聞きになりたい方は、お買い求め下さい」とPRした。さらに、12月28日には、芸能界最後となるディナーショーを開くとして、「ぜひ機会がございましたら」などと付け加えた。
最後に、「とりあえずは、これから違うこのステージで頑張りたいと思っております。よろしくお願いいたします。ありがとうございました」と結んだ。すると、議場から拍手が起きた。
その後、他の議員の質疑が続いたが、共産党の吉良よし子氏の質疑の前に、委員長から伝達があった。同じ維新の会の松沢成文氏から中条氏の発言中に「不穏当な言辞」があったとの指摘があり、委員長は、後ほど速記録を調査して適当な処置を取ると明らかにした。
中条氏の発言は、ツイッター上でも紹介され、国会を宣伝に利用しているのではないかとの指摘が出て、リツイートを通じて拡散している。
商品などの宣伝行為について、国会では、どのような扱いになっているのだろうか。
「広告行為の禁止規定はない」が、「議院の品位を傷つける行為に当たるか検討される見通し」
この点について、参院事務局の広報課は、「法律などには、質疑の際に広告行為を禁止するという明確な規定はありません」と取材に答えた。
ただ、参議院規則の第42条に「委員は、議題について、自由に質疑し、意見を述べることができる」とあり、質疑はあくまで議題について行うものだとした。また、同規則の第51条に「委員が国会法又はこの規則に違いその他委員会の秩序をみだし又は議院の品位を傷けるときは、委員長は、これを制止し、又は発言を取り消させる」、第207条に「議員は、議院の品位を重んじなければならない」とあり、議院の品位を傷つける行為に当たるか、今後検討されるとの見通しを明らかにした。
日本維新の会の広報担当者は11月15日昼過ぎ、取材に対し、「特段、現時点で申し上げることはありません。中条議員の事務所に聞いてほしい」と答えた。報道によると、維新は、議事録から中条氏の発言部分を削除するよう委員長に申し入れたという。
中条氏の国会事務所を取材すると、担当秘書が次のように釈明した。
「実は中条は、これを最後に芸能界を引退して、新たに国会の舞台で仕事をしたいと言いたかったということです。お客様の前で新曲のことなどをしゃべると喜んでくれますので、緊張して最後に『買って下さい』と言ってしまいました。宣伝するつもりはありませんでしたが、言わなくていいことを言ったと叱られますのは、仕方がないと思っています。本人は、まずかったと気づいて反省しており、発言部分をカットしたいと言っていました」
委員会終了後に、委員長から速記録の確認を取ると伝えられ、中条氏は、勉強不足を認めて、「ああ、いけなかったんですね」と頭を下げて謝罪したとしている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)