2022年シーズンは26年ぶりのパ・リーグ連覇、そして日本一に輝いたオリックス。「Bクラス常連」のチームが強豪に変わるまでの歩みを、ファンと共に見届けてきたキャラクターがいる。ロイヤリティマーケティング(東京都渋谷区)の「バファローズ☆ポンタ」(以下、バファローズポンタ)だ。
かつてはチームの負けに激しく落胆するコミカルなツイッター投稿で人気を博したが、勝ち星が増えるに連れ、ファンと喜びを分かち合う姿も目立つようになっていった。「常勝軍団」の気配も漂う今、アカウント担当者は何を思うのか。
「ポンタ、本当に本当にここまで長かったね...」
「ボクはオリックス・バファローズが大好きだ!」――。22年10月30日、オリックスがヤクルトとの日本シリーズを制し26年ぶりの日本一に輝いた試合後、歓喜の涙を流すバファローズポンタのイラストが投稿された。ファンからは「ポンタ、本当に本当にここまで長かったね...」「今までで一番いい顔しとる...!」「このイラスト見てたら涙が出てきた」などの声が寄せられ、悲願達成の喜びが分かち合われた。
「去年成しえなかった日本一を成し遂げられたことで、多くのリツイート、いいねをいただきました(編注:11月10日時点で3.3万リツイート、7.7万いいね)。この数字の伸びが、日本一を喜ぶバファローズファンの共感の大きさを表していたような気がします」
当時の心境について、バファローズポンタのツイッターを担当するロイヤリティマーケティング営業統括グループブランディング・コミュニケーション部の柴田豪さんは22年11月8日、J-CASTニュースの取材にこう振り返る。
しかし、ファンと勝利の喜びに浸るまでの道のりは平たんではなかった。
16年、共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を手がける同社がバファローズとスポンサー契約を結ぶと、タヌキをイメージしたキャラクター「ポンタ」が球団とコラボし、チームを応援する「バファローズポンタ」が誕生した。
同年4月にはじまったツイッターでは、チームの試合前と試合後に、それぞれバファローズポンタのイラストが投稿されることになっていた。しかし、応援に加わって初めての試合(4月9日)では、いきなりソフトバンク相手に1-13の大敗。試合後に投稿されたのは、ひどく痩せこけたバファローズポンタの姿だった。
「ネガティブな感情の『ガス抜き』に」
その後もオリックスは負けが続き、敗戦時にはポンタが暗がりで膝を抱えたり(4月10日)、頬に手を当てて叫んだりする(4月12日)イラストなどが投稿された。ソフトバンク相手に6-22と大敗を喫した同年5月24日の試合後には、呆然と立ちすくみ、涙を流すポンタのGIF(アニメーション画像)が投稿された。
6-22・・・
— バファローズ☆ポンタ@日本一記念CP実施中 (@bs_ponta) May 24, 2016
#bs2016 #NPB #オリックス #バファローズ #バファローズポンタ pic.twitter.com/9kVeRDHrmv
一方で、勝利を喜び、負けに落ち込む正直なリアクションが、野球ファンの間で好評を博すようになる。敗戦時には「生きろ!」「俺も頑張るからポンタも頑張れ」など慰めの声が寄せられた。チームの負けが続くと「そろそろ喜んでるポンタくんが見たいんや...」と、「バファローズポンタのための勝利」が望まれた。
柴田さんは21年5月10日、J-CASTニュースの取材に対し、バファローズポンタの投稿に込める思いをこう語っていた。
「チームが負けてイラっとしたとき、バファローズポンタを見て、ニヤッとしてもらう。そうすればネガティブな感情の『ガス抜き』になるんじゃないか。そんなことを思いながら、日々ツイッターを運用しています」
バファローズポンタが応援に加わった16年から20年まで、チームは5年連続でBクラスに低迷した。必然的に「負けイラスト」の投稿が増える状況の中、柴田さんは当時「我々としてはその日の試合に勝ったり、負けたり、『一試合一試合を楽しむ』という考え方でツイッターを運用しています。『日々応援あるのみ』だと思っています」と語っていた。
しかし、ここからチームの躍進がはじまる。21年6月12日には交流戦優勝を果たし、同20日には7年ぶりのリーグ首位に。後半戦はロッテとのデッドヒートを繰り広げ、10月27日には25年ぶりのリーグ優勝を成し遂げた。
優勝後に投稿された、号泣して喜ぶバファローズポンタのイラストは、アカウント史上最多となる4万7000リツイート、9万5000いいねを集めた。
「今年は何かが起こるかもしれない」予感した開幕戦勝利
チームが強くなり、必然的に勝利を喜ぶ描写が増えていったバファローズポンタ。柴田さんは「どうすれば、ポンタがいつもより喜んでいるように見えるかを考えて投稿するようになった気がします」とする一方で「特にアカウントの運用方針などは変えておらず、あくまでチームに寄り添い、応援する立場としてフラットに向き合ってきました」と話す。
そんな柴田さんが「変化」を実感したのは、22年3月25日の西武との開幕戦。実はオリックス、12年からリーグタイとなる開幕戦10連敗を記録していた。リーグ優勝を果たした21年も、エース・山本由伸投手を開幕投手に抜擢しながら、西武に3-4で敗戦していた。
前年と同じカード、そして同じ先発投手となった(オリックスは山本投手、西武は高橋光成投手)今年は、山本投手が西武打線を抑え6-0の完封勝利。不名誉な記録を止めた試合後、「ようやく勝ったぁぁ」と、バファローズポンタ一家が勝利を喜ぶイラストが投稿された。
「2016年に我々がスポンサーとなってから、開幕戦はポンタが悲しむイラストばかり出していました。今年初めて開幕戦に勝ったことで、『いつもと違う』『今年は何かが起こるかもしれない』と思いました」
4月10日にはロッテ・佐々木朗希投手にプロ野球28年ぶりの完全試合を許すなど、好調とは言えない序盤戦だったが、その後は粘り強く上位争いに密着。最終戦でソフトバンクをかわして逆転優勝を決めると、日本シリーズでは前年苦杯を舐めたヤクルト相手に雪辱を果たし、26年ぶりの日本一を成し遂げた。
チームの躍進を受け、21年5月から22年10月にかけてアカウントのフォロワー数は3万人以上増えた。柴田さんも「去年から『昨日は勝ったね』『おめでとう』などと、社内の人間から声をかけられる機会が増えました」と話す。
ファンの反応も、以前とは異なっているという。
「以前は他球団のファン方から『もっと元気出してね』と励ましの声をいただく機会が多かったですが、今は勝利に共感するバファローズファンからの反応やリプライが多くなったと思います。他球団のファンの方からも『おめでとう』『今日は負けたけど次は負けないよ』と、ポジティブな反応をいただけるようになりました」
19年オフには「日本一という最高の白星」を願い、真ん中に「☆」を入れた表記に変更したが、今年ついにその悲願が達成された。バファローズポンタはこれから、どこへ向かうのだろうか。
「来季について具体的には決まっていませんので、バファローズ☆ポンタと相談します」
(J-CASTニュース記者 佐藤庄之介)