約10年前に購入したカメラに、対戦ゲームが備わっていたとツイッターで話題になっている。「フォトチャレンジャー」というゲームで、赤外線通信を用いて撮影データを競うことができるという。
いったいどんなゲーム?
「フォトチャレンジャー」は、2010年に発売されたデジタル一眼レフカメラ「PENTAX K-r」にのみ備わった機能だ。2022年11月2日、ツイッターユーザーの阿部春さんが次のように言及したことで脚光を浴びることになった。
「自分の一眼レフに対戦機能あるの10年越しに初めて知ってワロタw」
取材に対し阿部春さんは、友人のツイートをきっかけにこの機能を知ったという。友人はゲーム大会で「フォトチャレンジャー」の企画を試みていた。しかし対戦には2台のPENTAX K-rが必要で、現在は生産終了しているため入手は困難だ。阿部春さんは、友人の探し求めていたカメラを偶然にも所有していたことに驚いた。
「購入当時はカメラ好きでアウトドア派が多い職場でしたので、『同僚と一眼レフカメラで旅先の風景を撮りにいく』という用途で購入していたのですが、まさか10年後にこのような機能があり、おふざけ会で再び使う日が来るとは、と」
ゲームでは、ユーザー同士がPENTAX K-rで撮影した画像の撮影データを競う。さっそく友人とプレイした阿部春さんによれば、シャッター速度や絞り値、ISO感度、装着レンズ名などの撮影情報は〇・△・□の3つのパラメーターに割り振られる。
パラメーターを伏せた状態で相手の写真を確認後、各ユーザーがどの記号の数値から競わせるか戦略を練る。指定した順に数値を競い合い、勝ち星が多いほうが勝利となる。負けた写真には、画面にひびの入ったような演出がされる。
「現代のライトなゲームアプリと遜色のない出来栄えに驚きを隠せません」
阿部春さんは、「カメラのおまけ機能だし、まぁ確認程度で」と軽い気持ちで挑んだものの、「開発者の強いこだわりを感じると共に、良く出来過ぎている」と驚き、友人と思わず笑ってしまったという。
「実際プレイしてみるとカメラの1機能であるにも関わらず、ゲームに戦略性の幅があり更に演出面まで凝っていて、10年前の機能なのに現代のライトなゲームアプリと遜色のない出来栄えに驚きを隠せませんでした」
阿部春さんは、「『フォトチャレンジャー機能』のおかけで今回の機会が生まれ、開発者様に感謝をしたいと思います」とコメントした。一方で阿部春さんと友人の間では、対戦機能に盛り上がると同時に「何故この1機種のみの限定機能だったのか?」という疑問が生じたという。
J-CASTニュースは、リコーイメージングの製品広報を務める川内拓さんに取材した。「PENTAX K-r」発売時には商品企画マネジャーも兼任していたという。
1種だけに備わった対戦機能、なぜ?
そもそも、なぜカメラに対戦機能を設けたのか。川内さんによると「PENTAX K-r」は、フォトチャレンジャーで活用する「高速赤外線通信機能」を採用した同社初のモデルであり、その性能を発信する狙いがあったようだ。
赤外線通信は、Bluetoothなどが登場する約10年から20年ほど前に活躍した通信機能で、携帯電話やゲーム機などで用いられた。PENTAX K-rでは従来の赤外線よりも高速で通信できるといわれる規格「IrSimple」や「IrSSTM」を採用。対応する電子機器に画像を送信でき、携帯電話を通じてブログ掲載なども簡単にできたという。
「話題性を持たせてIrSimpleの機能を拡げるために同機能を使った付加価値を検討した結果、『PENTAX K-r』同士での画像交換や、画像に添付されているExif情報(撮影データ)を使った簡単な対戦ゲームができたりするなど、新しい写真コミュニケーションのひとつとして楽しんでいただける機能として搭載しました」
しかし現行機種にフォトチャレンジャーは搭載されていない。なぜなのか、川内さんは次のように答える。
「上記製品の発売以降、市場では無線LAN(Wi-Fi)の普及が飛躍的に進んだため、通信速度や到達距離なども考慮した結果、それ以降の製品では採用していません」
ちなみに、前出の撮影データをもとにした数値について、具体的な判定パラメーターは非公開とのことだ。
現在、フォトチャレンジャーが話題になったことを受けては次のようにコメントした。
「『PENTAX K-r』発売時は、100色のオーダーカラーに話題が集中したこともあり、本機能について取り上げられることは少なかったのですが、PENTAXらしいユニークな機能として、今なお話題にしていただけるユーザーの方がいらっしゃるのは、大変ありがたい限りです」