世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害救済・防止を図る新法について、岸田文雄首相が今国会に提出する考えを表明した。
岸田政権は山際大志郎氏を事実上更迭し、宗教法人法における解散請求手続きに入ろうとし、それで事態の収拾を図るつもりだった。
この手続きは少なくとも3ヶ月程度の時間を要するので、今国会に限れば、政府は手続きを検討中ということで乗り切れる。もし政府が請求をするとしても来年以降であり、その場合、裁判所が実際に解散命令を出すかどうかは別問題だし、それにも時間がかかる。マスコミの追及する話題には、時間のかかる手続き論に持ち込むというのが鉄則なので乗り切れるはずだったが、そう甘くなかった。
方針転換を余儀なくされた岸田政権
与野党で対策法案協議していたが、そちらのほうから火の手が上がった。
政府・与党は消費者契約法の改正を進めようとしていた。改正のポイントは、霊感商法の取消権でその要件の緩和、行使期間の延長(現在は契約締結から5年)だった。これは、前々から政府内で検討されていた既定路線だ。
一方、立憲民主党と日本維新の会は、(1)寄付や物品購入は年収の4分の1を上限とする、(2)マインドコントロール下の高額献金は被害者の家族も取り消し請求できる、(3)不適切な献金の勧誘に罰則を設ける―を盛り込んだ法案を共同提出した。
この野党案に対して、与党の公明党は支持団体である創価学会を配慮し、消極的と報じられた。実際、創価学会への飛び火を公明党はかなり警戒した。そこに世論の批判が集まったこともあり、岸田政権は方針転換を余儀なくされた。