SKE48の須田亜香里さん(31)が2022年11月1日、本拠地のSKE48劇場(名古屋市中区)で卒業公演を行った。須田さんがSKE48の3期生オーディションに合格にしたのは09年11月1日で、ちょうど13年にわたるアイドル生活に幕を下ろした。
20曲を3時間以上かけて披露。終盤のスピーチは約11分におよび、そのうち9分を、14年からリーダーを務めてきた「チームE」メンバーへのメッセージにあてた。とりわけ多くの時間を割いて須田さんが強調したのが、開演直前に組む「円陣」のかけ声の意義だ。円陣では「今日の目標」を掲げることになっており、それが達成できたら「自分のことをみんな褒めてあげてほしい」。「自分はこれができない」といった感情を抱いてしまいそうになる時でも、少しでも自己肯定感を上げるための仕掛けで、「(ステージ上の)どこに立っていてもチャンス」になる、と説いた。須田さんはデビューからしばらくは「3列目隅」が定位置だったが、握手会対応が評価されてブレーク。グループを代表するメンバーとして活躍してきた。こういった経歴を持つ須田さんならではの持論だ。
「今日の目標!せーの!」に始まり「どこにいたって主役は私!」と気合を入れる
卒業公演終盤、須田さんはファンから贈られたピンク色の花冠を付けたドレス姿で、ソロ曲「私の歩き方」を披露。その後、最後のスピーチに臨んだ。冒頭、2分間にわたってファンへの感謝を述べ、続いて「私、今日ね、チームEのメンバーでどうしても卒業公演がしたかったの」。リーダーとして率いたチームEへの思いを語った。最も多く時間を割いたのが円陣についてだ。チームEの円陣のかけ声は「今日の目標!せーの!」に始まり、各自が公演の自分の目標をつぶやく。続いて「どこにいたって主役は私!私たちはナンバーワン!いくぞー!チームE!」と気合を入れてステージに臨む流れだ。
まずは前段の「今日の目標!せーの!」の部分。須田さんは、アイドル活動やプロとしてステージに立つ上で、「何かを達成すること」を重視してきたという。「自分はこれができない」「自分なんてまだまだ駄目だ」といった自己否定に走りそうな時でも、目標を掲げることで「その目標を叶えられたら、今日、自分のことをみんな褒めてあげてほしい」という願いを込めた。
ステージ上のどのポジションに立つかによって感じることは、メンバーによって千差万別だ。須田さんも「3列目隅」から「センター」まで、様々なポジションを経験した。だからこそ、
「みんなには、一瞬一瞬感じること、『悔しいな』とか『嬉しいな』とか、全部の感情を無駄なものにしてほしくない。『こんなふうに思う自分駄目なんじゃないか』って思わないでいてほしいな」
と訴えた。
「『端だけど絶対みんな私のこと見てる!』と思い込んで立つこと」がチャンスにつながる
後段の「どこにいたって主役は私!」では、「『私なんて端にいるから見られていない』ではなく『端だけど絶対みんな私のこと見てる!』と思い込んで立つこと」を説く。それがチャンスにつながるからだ。
「そうすると、本当に絶対みんな見ててくれるし、『こんなに端にいたのに、あの瞬間見ててくれてたんだ!』っていうファンの方との絆も生まれたりもするから...。だから、どこに立っていてもチャンスだから」
ただ、須田さんは「アイドル活動の中で、これってもしかして一番大事だったかもなあ?と思うこと」として「メンバーが主役ではないこと」を挙げた。メンバーと運営スタッフとの関係を説明する文脈だ。「『メンバー』と『大人』」という「何か学校に近い感覚」になりがちな両者の関係だが、本来は「助け合ってグループを一緒に良くしていく仲間」。具体的には、次のように説明した。
「常にメンバーみんなも、スタッフさんと話し合って、より素敵なSKE48を作っていく一員として、1人1人が、『自分が、その役を担っているんだ』ということを忘れずに、自分の意見や考えに自信を持っていてほしい」
須田さんは22年10月掲載のJ-CASTニュースのインタビューで、グループや後輩メンバーに望むこととして、大きく(1)自分たちの努力に誇りを持っている人たちであってほしい(2)自分のことを好きでいてほしい(3)いろいろなときにファンの方のことを思ってステージに立てる人であってほしい、という3つを挙げていた。この点を改めて強調したとも言えそうだ。
最後の曲に「桜の花びらたち」選んだ理由
スピーチの直後、リーダーの後任として8期生の佐藤佳穂さん(25)を指名。その理由を
「いつも、ファンの方のことを思って動いているところがすごく好きでした。私、信頼してました」
「アイドルとしてプロとしての姿勢、覚悟をすごく持ってる子」
と説明すると、佐藤さんは
「自由にのびのびとルールを守りつつ、ギリギリのところを攻めながら、チームEの限界の先の、想像していなかったところを攻められるチームでいられるように、率先して自由にやっていきたいと思います!」
と意気込んだ。副リーダーは福士奈央さん(23)が続投する。
卒業公演の最後の楽曲は「桜の花びらたち」(06年発売)。AKB48の1枚目のシングル曲で、須田さんにとっては「SKE48人生の中で、最初に壁にぶつかった、できなかった曲」だ。いわく「ぱっと見はすごく簡単に見えるんですけど、どう頑張ってもそれができなくて、リズムが取れなくって、レッスン場のスピーカーの前でワンワン泣きながら、でもその涙をかみ殺しながら、ひたすら歌う練習をして、いっぱいもがいた曲」。
この楽曲をアイドル生活の締めくくりに選んだ理由を、こう説明した。
「だからこそ『できるようになったんだぞ!』というのを見せたかったこともありますし、みんなと歌いたいなと思ったので、それをみんなで歌わせていただきます」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)