米アマゾンは2022年11月1日、有料会員向け音楽配信サービス「Amazon Music」の楽曲数拡充を発表した。
これまでは200万曲を配信していたが、追加料金なしで1億曲以上に対象を広げる。利用者の満足度向上が期待されるが、SNSでの評判は芳しくない。
「縛り」発生
Amazon Musicは、年会費4900円(または月額500円)のAmazonプライム会員向けのサービス。200万曲の楽曲やプレイリスト、ラジオが聴き放題となる。
上位のプラン「Amazon Music Unlimited」もあり、追加で年会費8800円(または月額880円)を支払えば、対象が9000万曲以上に拡大する。
アマゾンジャパンのプレスリリースによれば、11月1日からAmazon Musicの楽曲数を追加料金なしで1億以上に増やした。ツイッターでは関連ワードが複数トレンド入りするなど注目を集めたが、"縛り"への不満が多く寄せられている。
楽曲は大幅に増えたものの、ほとんどの曲は「シャッフルモード」に限定されてランダム再生となる。任意の曲を探して聞く「オンデマンド再生」が大幅に制限される。
さらにスキップ回数の制限や、アルバムを再生しようとすると類似した楽曲も含めてシャッフル再生されるなどの機能も加わった。
人気歌手「私たちの物語は私たちが意図したとおりに聞かれるべき」
ツイッターでは、利用者から「曲が選択出来ないしリピートも出来ない」「アルバムを再生したのに違うアーティストの曲が流れますね(中略)これは凄まじく違和感」「聞ける曲増えても、シャッフル再生なんだったら元のままの方がいい」と違和感が次々に表明されている。
「この仕様にした方が課金移行率が高いんだろうね」「シンプルに改悪であり、unlimitedへの強制誘導に見える」と、強引なアップセル(客単価向上)施策と捉えた人も少なくない。
海外でも議論になっていようだ。米メディア「Mashable」は「アルバムのトラックを順番に聞くことができないことは、多くの音楽ファンにとっては実質的に冒涜である」と非難し、音楽配信サイト「Spotify」での騒動に言及している。
イギリス出身の人気歌手・アデルさんが21年11月、Spotifyでのシャッフル再生に「アルバムのトラックリストは理由なく作成することはありません(中略)私たちの物語は私たちが意図したとおりに聞かれるべきです」とツイッターで要望し、仕様変更される出来事があった。
Amazon Musicバイスプレジデントのスティーブ・ブーム氏は米メディア「Variety」の取材に、音楽会社との契約条件はシャッフル再生とオンデマンド再生で異なるものの、「プライム体験の向上のためであり、アマゾンのコスト削減のためではない」と話している。