高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
知っておくべき「年金の本質」 保険料納付の期間延長しか「解がない」理由

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   年金の納付期間の延長が話題になっている。年金はすべての人に関係あるので、意見もさまざまだ。

   年金保険料の納付期間は現在、20歳から59歳までの40年間。この納付期間を5年延長し、20歳から64歳までの45年間にする案が政府内で検討されている。

  • 年金保険料の納付期間延長が検討されている(写真はイメージ)
    年金保険料の納付期間延長が検討されている(写真はイメージ)
  • 年金保険料の納付期間延長が検討されている(写真はイメージ)

年金の本質は、長生きした時の「保険」である

   国民年金の保険料は、月額1万6590円(2022年度)。延長される5年間で納める総額は99万5400円となり、約100万円の負担増となるとも解説される。

   そして、その理由として少子高齢化が報道で挙げられている。

   働く世代が少なくなり、保険料を納付する人数が減ると、年金を支払うための財源は少なくなる。その一方で年金をもらう高齢者は増えるため、財源の確保が難しい状況になっていくという説明だ。

   この説明は間違いとまでは言わないが、年金の本質から外れている。

   年金の本質とは何か。それは、長生きした時の「保険」である。死亡保険は死んだ時の保険だが、長生きした時の保険はイメージしにくい。ざっくりいえば、みんなから保険料をとって、平均寿命より早死にした人には年金を払わず、平均寿命より長生きした人に年金を払うという仕組みだ。

平均寿命が伸びれば、年金額を維持しようとすれば納付期間の延長しか、解がない

   この時、保険料と年金額はどうなるか。これもざっくりいえば、少し現実の数字ではないが、20歳から60歳まで40年間年収の2割の保険料を払えば、平均寿命が80歳であれば60から20年間年収の4割の年金額になる。年金数理からみると、これで年金財政は問題ない。式でかくと、

   0.2×40=0.4×20

だ。この場合、ここの人からみれば、平均寿命で死んだ人は収支トントン。早死した人はマイナス、長生きした人はプラス。

   上の設例で、平均寿命が90歳になると、年金額は年収の2割7分になる。この式は、

   0.2×40≒0.27×30

   これでは老後生活できないとなれば、納付期間の延長しかない。20歳から70歳までの50年間とすると、年金額は年収の5割になる。式は

0.2×50=0.5×20

   以上は、筆者の目の子算であるが、年金数理から見れば、平均寿命が伸びれば、年金額を維持しようとすれば納付期間の延長しか、解がない。ちょっとした「算数」なので、マスコミはこうした解説もしないとまずいのではないか。

   実際の制度設計では、もっと具体的な数値例が出せるので、それに即した解説もできる。年金が長生き保険という本質に着目した説明が必要だ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。


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