平均寿命が伸びれば、年金額を維持しようとすれば納付期間の延長しか、解がない
この時、保険料と年金額はどうなるか。これもざっくりいえば、少し現実の数字ではないが、20歳から60歳まで40年間年収の2割の保険料を払えば、平均寿命が80歳であれば60から20年間年収の4割の年金額になる。年金数理からみると、これで年金財政は問題ない。式でかくと、
0.2×40=0.4×20
だ。この場合、ここの人からみれば、平均寿命で死んだ人は収支トントン。早死した人はマイナス、長生きした人はプラス。
上の設例で、平均寿命が90歳になると、年金額は年収の2割7分になる。この式は、
0.2×40≒0.27×30
これでは老後生活できないとなれば、納付期間の延長しかない。20歳から70歳までの50年間とすると、年金額は年収の5割になる。式は
0.2×50=0.5×20
以上は、筆者の目の子算であるが、年金数理から見れば、平均寿命が伸びれば、年金額を維持しようとすれば納付期間の延長しか、解がない。ちょっとした「算数」なので、マスコミはこうした解説もしないとまずいのではないか。
実際の制度設計では、もっと具体的な数値例が出せるので、それに即した解説もできる。年金が長生き保険という本質に着目した説明が必要だ。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。