トランスジェンダー女性に「女装している男性」 書籍の「配慮に欠ける誤った表現」で出版社謝罪、絶版に

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   出版社の黒鳥社(東京都港区)は、2020年出版の書籍「それを感じているのは私だけじゃない:こんにちは未来 ジェンダー編」の中で、出生時に割り当てられた性別が男性で性自認が女性のトランスジェンダー女性を「女装している男性」とするなどの不適切表現があったとして、22年10月18日に謝罪した。

   コストの都合などから書籍の再刊行はせず、絶版となる。書店での新規販売も終了する。

  • トランス女性を「女装している男性」と表現、出版社が「不適切表現」で謝罪(ニュースリリースより)
    トランス女性を「女装している男性」と表現、出版社が「不適切表現」で謝罪(ニュースリリースより)
  • トランス女性を「女装している男性」と表現、出版社が「不適切表現」で謝罪(ニュースリリースより)

「著しく配慮に欠ける表現」「問題の理解において認識が圧倒的に欠如」

   「それを感じているのは私だけじゃない:こんにちは未来 ジェンダー編」は、ニューヨーク在住のジャーナリスト・佐久間裕美子氏と黒鳥社コンテンツディレクターの若林恵氏が、ポッドキャスト番組でジェンダーをテーマに対談した際の内容を収録した本。発行は黒鳥社、発売は青山ブックセンター本店(東京都渋谷区)で、20年8月5日に全国の書店で取り扱いがはじまった。

   黒鳥社は22年10月18日、若林氏名義の「お詫びと書籍絶版のご報告」と題した文書をnoteとツイッターに投稿。同書のアメリカのトイレに関する対談の記述の中で、佐久間氏がトランスジェンダー女性を「女装している男性」と表現していたことなどについて、読者から「一部の読者を傷つける不適切な内容」との指摘が寄せられたとした。

   若林氏は佐久間氏との協議の結果、上述の表現などが「配慮に欠ける誤った表現」だと結論付けた。同氏は「主旨として『LGBTQの権利や安全』を擁護すべく語られた箇所であったにもかかわらず、著しく配慮に欠ける表現となってしまったのは、書籍刊行時点において、著者も編集担当者も、表現の部分のみならず、そもそもの問題の理解において認識が圧倒的に欠如していたことに起因しています」と経緯を説明。読者に対し、次のように謝罪した。

「著者としての責任において、編集統括者の責任において、またコンテンツの発行元の責任においても、明らかに不勉強であったことを認め、本書によって傷つけてしまった方に心よりお詫びを申し上げます。申し訳ございませんでした。また、当該箇所におきまして違和感を覚えることのなかった読者のみなさまに対しても、明らかに適切でない表現のもと、誤った認識を流布してしまったことを深くお詫びいたします」

「差別や攻撃に加担しかねない」

   若林氏は文中の「女装している男性」を「トランスジェンダーの人」に修正するなどの対応を説明。一方で、改訂版の刊行はコストや市場性の課題から難しいとした。また「書籍がすでに時代性やその後の考えや認識の変化を十全に反映できていない」という観点も踏まえ、同書を絶版とし、新規の取り扱いも終了するとした。

   同氏は「ご指摘いただいた本書における瑕疵は、著者はもとより、編集の仕事に携わる者としての不勉強・至らなさを猛省させられるものでした。改めて編集・出版の仕事の責任の重さを感じるとともに、いっそうの緊張感をもって臨む必要を痛感させられた次第です」とし、佐久間氏にも謝罪した。

   また、佐久間氏もnoteの中で「黒鳥社からの連絡を受けて本書を読み直し、トランスジェンダー女性についての偏見を助長し、差別や攻撃に加担しかねない、また現在の自分にとってはありえない表現を使っていた過去に気がついて呆然としました」と振り返り、次のように謝罪した。

「書籍版の発刊の際に気がついて訂正すべきだったところをそれすらも怠り、振り返ることもなくここまで来てしまったこと、傷を与えてしまった人がいるであろうこと、またこの本を手に取り読んだりにすることで間違った知識を得てしまった人がいるだろうことを考えると悔やまれてなりません。ここに深くお詫びをしたいと思います」
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