日本政府が行ってきた新型コロナウイルス対応の水際対策が2022年10月11日に大幅に緩和され、国外から観光客が続々と空港に到着している。空路が活況を呈する一方で、いまだに閉ざされたままなのが海路だ。
特に日韓の船旅は20年3月から不可能な状態が続いており、フェリーも貨物だけを載せて運航している。国内の事業者は、旅客輸送の再開時期について「未定」だと口をそろえる。日韓当局との協議に時間がかかっているためだ。韓国メディアでは「11月中旬」前後の再開を期待する業界の声が伝えられている。
国内線の運航余儀なくされる「クイーンビートル」
国土交通省九州運輸局のまとめによると、「コロナ前」の19年に九州から入国した外国人は422万2026人。空港や港別に見ると、最も多かったのが福岡空港の214万1956人で、次に多かったのが博多港の55万2550人だった。日韓の旅客船による定期航路やクルーズ船の運航が再開されれば、観光客数は大幅に伸びるとみられる。
日韓の旅客航路で知名度が高いのが福岡-釜山を結ぶJR九州の高速船「ビートル」だ。1991年から「ジェットフォイル」と呼ばれる高速船を使って運航しており、20年7月から新型の三胴式高速船「クイーンビートル」が就航することになっていた。だが、コロナ禍で全便運休になったことで就航は延期に。当初はコスト削減のためにパナマ船籍だったが、日本船籍に登録し直した上で、博多湾クルーズや、福岡と門司港や長崎を結ぶ国内路線で運航されている。「コロナ前」に運航されていたジェットフォイル3隻は売却される見通しだ。
日本政府が水際対策緩和を発表した資料では、国際線の運航が止まっている空港や港について
「地方公共団体の協力を得つつ、個別港ごとに受け入れに係る準備を進め、これが整い次第、順次、国際線の受け入れを再開する」
と説明している。この「受け入れに係る準備」が問題になっている。
釜山港「韓国政府側から関連の指針が降りてこず、動向把握をしている状況」
「クイーンビートル」を運航するJR九州高速船は「日韓当局と協議し、水際対策や受け入れ体制が整い次第」、釜山線の運航を始めたい考え。11月28日から12月16日まで定期ドックに入る予定で、就航が整備の前後どちらになるかについても「お答えは差し控えたい」とするにとどめた。
福岡と釜山をフェリーで結ぶ「カメリアライン」も、検疫の段取りについて「日韓の省庁と確認・協議中」だと説明。「1~2か月かかるのでは」とも話している。「なるべく早く」再開したいとしているが、具体的な時期は未定だ。
韓国の通信社「ニュース1」は、韓国の旅行業界としては「11月中旬頃」の航路再開を希望する一方で、「韓国政府側から関連の指針が降りてこず、動向把握をしている状況」だとする釜山港湾公社関係者の声を伝えている。聯合ニュースも「11月中旬以降」の再開を期待する声を伝えている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)