任天堂は2022年10月12日、修理サービスの利用規定を改定し、新たな項目「カスタマーハラスメントについて」を追加すると発表した。
客が企業に理不尽な要求をする"カスハラ"は社会問題となっており、厚生労働省が2月に対策マニュアルを作成したほどだ。同社は取材に「お問い合わせ対応の現場においても、お客さまに笑顔になっていただくために、働く従業員も笑顔でいるためのルール作りが必要と考えました」と背景を明かす。
カスハラには毅然とした対応
任天堂の新たな規定では、カスハラ対策を新たに盛り込んだ。
同社製品のアフターサービスを客が希望した際、「ご要望を実現するための手段として、社会通念上相当な範囲を超える行為を行うことはご遠慮ください」と明記した。
該当行為として、次の7つを例示している。
・威迫・脅迫・威嚇行為
・侮辱、人格を否定する発言
・プライバシー侵害行為
・保証の範囲を超えた無償修理の要求など、社会通念上過剰なサービス提供の要求
・合理的理由のない当社への謝罪要求や当社関係者への処罰の要求
・同じ要望やクレームの過剰な繰り返し等による長時間の拘束行為
・SNSやインターネット上での誹謗中傷
カスハラ被害があった場合、製品の交換や修理に応じないケースもあるとし、悪質な客には警察や弁護士に相談のうえ、「適切な対処をさせていただきます」とけん制した。
カスハラはセクハラより多い?
厚労省の2020年10月の労働者への調査(8000人が回答)では、過去3年間にカスハラを受けた人の割合は15.0%と、セクハラ(10.2%)より高かった。「長時間の拘束や同じ内容を繰り返すクレーム」(52.0%)が最も多い被害で、「名誉毀損・侮辱・ひどい暴言」(46.9%)、「著しく不当な要求(金品の要求、土下座の強要など)」と続く。
厚労省は結果を踏まえ、22年2月に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」や啓発ポスターを公開した。
こうした社会情勢もあり、任天堂の規約改定は広く歓迎された。カスハラへの毅然とした態度を表明するとともに、従業員を守る姿勢を示した格好となり、SNSでは「しっかり明記する企業は良いよね。社員さんも安心できるだろうし」「弊社にも取り入れてほしい」などと反応が寄せられた。
任天堂は13日、J-CASTニュースの取材に「当社はお客さまはもちろん、開発者を含む従業員など、当社にかかわる全ての人を笑顔にすることを目指しています。お問い合わせ対応の現場においても、お客さまに笑顔になっていただくために、働く従業員も笑顔でいるためのルール作りが必要と考えました」と背景を説明した。