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高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
「マイナンバーカードと健康保険証の一本化」打ち出した政府の狙いを読み解く

   政府は紙の健康保険証を2024年の秋にも原則廃止し、その上でマイナンバーカードと一本化するという。

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ゆっくりマイナ保険証を進めていく

   これに対して、町でインタビューすれば、紙のほうがいい、手続きが面倒、情報管理が心配などの紋切り型の答えがでてくる。

   実は1年前の昨年10月から、健康保険証はマイナンバーと既に一本化されている。いわゆる「マイナ保険証」は運用されている。既にマイナ保険証の人には何の変化もない。

   今、紙の健康保険証を使っている人はどうなるのだろうか。2024年秋という2年先の話なので、細かいところはまだ何も決まっていない。原則廃止というのだから、基本的には紙の健康保険証はなくなるが、役所用語の「原則廃止」というのは例外もかなりある。

   ひょっとしたら例外ばかりで実態は今と変わらない場合もある。となると、政府は一応掛け声をかけただけというのもあり得る。

   ただし、これでは政府としても物足りない。となると、例外を一定の場合に限定し、今より紙の健康保険証が少なくなることを狙ってくるだろう。

   これがよくある役所のやり方だ。ゆっくりマイナ保険証を進めていくので、時間がかかるが、社会的混乱はほとんどないというか、気が付かないうちに、紙の健康保険証を見なくなったね、となるのが、政府のやり方だ。

医療費控除で確定申告が容易になるなどのメリットも

   実は今でも紙の健康保険証は少なくなっている。マイナ保険証でなく、紙でなくプラスチックのカード型の健康保険証への切り替えが行われている。紙よりプラスチックの方が丈夫で小さいので、さすがにカード型の健康保険証を拒む人はほとんどいない。

   こう考えると、2年先の紙の健康保険証の原則廃止という場合、紙からマイナ保険証への移行とともに、紙からカード型への移行を進めていくのだろう。移行が済めば、マイナンバーカードと同じ形なので、マイナ保険証への更なる移行は心理的にはハードルがより低くなる。

   カード型とマイナ保険証の差は、紐付きであるかどうかだ。その場合、不安が出てくるのはやむを得ない。

   政府がどのように対応するのか。技術的にはこうした電子化は日本は遅れているので、他国の例を導入すればほとんどの不安はある程度解消できるだろう。

   運用面で、かつてのLINEのように海外に依存するのではないかという不安もある。公共インフラで経済安全保障法もあるので、そうしたことは杞憂であろう。

   紐付きそのものは、医療費控除で確定申告が容易になるなどのメリットも多い。セキュリティについて、世界の先行事例を見ながら、常に万全の準備を怠ってはいけない。

   なお、最近、紙の健康保険証の原則廃止に関連し、政府はマイナンバー移行で「預金封鎖」を狙っているというデマもある。これを財政破綻を煽りたい人たちが流している。「預金封鎖」は新規立法が必要で、そんな非常識な議員はいないが、デマがあるのは事実だ。これらにも気をつけてほしい。