「ドライバーさん違法駐車みんな見てますよ」。タクシー運転手に路上駐車マナーを呼びかける看板がSNSで話題を呼んでいる。人間の心理を巧みに突いたデザインが「素晴らしい」と評判だ。
設置したのは京都市。一日あたりの違法停車時間が9割減少した期間もあり、担当者は「費用対効果はかなり大きかった」と話す。
窓を覗くとそこには
看板は2022年10月10日、目撃者がツイッターで紹介するとにわかに注目を集めた。京都市の目抜き通り「四条通」の交差点に設置されたものだ。
窓付きの珍しい作りで、車道側、歩道側と見る位置によって異なったメッセージが載っている。前者は目のイラストともに「ドライバーさん違法駐車みんな見てますよ」とあり、タクシー運転手に駐停車禁止エリアでの客待ちなどを警告している。
後者は「この窓から見えるタクシーは、違法駐車中です」「←南行きタクシーのりば(徒歩一分)」とあり、ルール違反のタクシーを使わないよう利用者に示唆している。いずれの面にも、設置主として市と警察の署名がある。
ツイッターでは6万以上の「いいね」を集め、「素晴らしい」「是非全国へ広めてください」と高評価が相次いだ。
市の発表によれば、NTTデータ経営研究所との官民プロジェクトとして、2月から設置を始めた。
「ナッジ」活用
京都市では、タクシーの違法駐車が長年の課題だった。特に四条通で横行し、バス発着の妨害や渋滞につながっていた。運転手はもちろん、交差点内や横断歩道付近で乗車しようとする客にも原因の一端があった。
タクシーが交差点で客待ちをしていると、客もそこで日常的に乗降してしまう。すると、ますますタクシーは交差点付近で客待ちをする――といった悪循環に陥っていた。
市はタクシー団体を通じて運転手に啓発をしたり、横断幕を掲出したりとあの手この手で改善を図ったが、大きな効果は得られなかった。
そこで、アイデア募集プラットフォーム「KYOTO CITY OPEN LABO」で民間から打開策を募り、NTTデータ経営研究所との実証実験で看板設置となった。「ナッジ」と呼ばれる行動経済学の知見を活用しており、望ましい行動を促すデザインになっている。
2月の調査では、看板設置直前に比べて1日あたりの違法停車時間の合計が88%減少した。警察からは、タクシーに関する苦情が大幅に減ったとの報告もあった。市の歩くまち京都推進室は10月11日、J-CASTニュースの取材に「費用対効果はかなり大きかった」と答える。実験を始めてから8か月が経ったが、「感覚的には効果は持続しています」。
具体的な計画はまだないものの、同じ課題を抱えたエリアへの横展開も検討するという。