環境問題への関心が高まる中、パレットに残ってしまった絵の具の処分方法をめぐりSNS上で議論になっている。水で洗い流すのとティッシュなどに含ませて焼却するのであれば、どちらがより自然環境の保全につながるのか気になっているようだ。
水洗と焼却、メーカーはどちらを推奨しているのか。J-CASTニュースは2022年10月上旬、大手2社に取材した。
トータルで考えるとエコの判断は難しい
発端はツイッターで9月30日、美術教師だというアカウントが発した疑問だった。パレットについた絵の具は、洗って水に流すべきか、紙で拭き取って燃えるゴミとして処理するべきか悩み、自ら調べた結論は焼却が好ましいとのことだった。
パレットに残った絵の具はどのように処分するのが最も「エコ」なのか。アクリル絵の具などの製造販売で知られるホルベイン画材(大阪市)は、総合的に考えると判断は難しいとして次のように説明する。
ティッシュやキッチンペーパーで拭き取る場合は、その紙類の製造においてパルプ、水、電気などの資源を消費し、焼却では熱と二酸化炭素を排出する。水に流す場合に下水処理で発生した最終汚泥は、焼却処理で発生した燃えかすと共に埋め立て処理されることになる。
その上で「現時点では、絵の具を拭き取ってから残りを水洗いするのが良い、と考えております」と述べる。
水洗については、下水処理設備のある地域では、廃水をそのまま流しても問題ないとしている。しかし河川へ直接流す地域に住んでいる利用者に対しては、なるべく絵具を拭き取ってから廃水を下水へ流すよう呼び掛ける。学校現場などで環境保全に取り組む際には、下記の方法もあるという。
「教室など多人数で使用した廃水は、バケツなどに集め、絵具を沈殿させてから上澄みを下水に流し、沈殿物は乾燥させて燃やせないゴミとして廃棄してください。ウェス(布)は燃やせるゴミとして廃棄処分してください」
また学校現場でよく用いられる水彩絵の具の洗浄方法については、文部科学省の公式サイトでもふき取ってから洗浄することを推奨している。
「パレットに余った絵の具を雑巾などでふき取ってから、バケツにつけて洗うなど、水の無駄を防ぐ方法もあります。筆やパレットを水洗いするために、古い歯ブラシを絵の具バッグに入れておくのも手際のよい片付けにつながります」
配管トラブル防止の観点からも「ふき取り」が大事
同じく絵具販売で知られるターナー色彩(大阪市)も、節水などの観点からまずは拭き取ることを推奨している。余った絵具などを大量に廃棄する場合は、環境面のみならず配管の詰まりなど他のトラブルの原因にもなりかねないとして、「下水に直接ながさず、必ず紙やウェスの上で乾燥させる、または市販の凝固剤などで処理を行ったのち、各自治体のルールに従って廃棄頂くようにお願いをしております」という。
洗浄については自治体の指導に基づく対応が前提だとしたうえで、次のように説明した。
「一般のご家庭や教育現場にて筆やパレットに付いた少量の絵具を洗浄する場合は、下水に流していただいても環境面に対して大きな負荷を掛ける恐れはないと考えております。
ご使用後、パレットに残った絵具の量が多い場合は、紙やウェスなどで拭き取ったのち洗浄することで水の使用量も削減できますので、よりエコにつながるかと思います。
排水することに抵抗があるユーザー様に対しては、紙やウェスで拭き取ったのち乾燥させてから廃棄するなど、他の方法での洗浄をご提案させていただくこともございます」
また刷毛やローラーなどで塗ることが多い塗料(ペンキなど)の場合は、絵画などで使う一般的な筆と比べて含有量が多くなる。ターナー色彩は、全て水で洗い流すとなると水が大量に必要になるとして、下水への負荷や水資源を有効に使うという観点からも、可能な限り紙やウェスで拭き取ってから、最終的に水洗いするのが望ましいという見解を示す。また塗料製品は用途によって含まれている成分が異なることがあるとして、捨てる時は各自治体のルールに従うよう呼び掛けている。