Jアラートの問題点と評価できる点
そもそもJアラートとは、弾道ミサイル攻撃に関する情報や緊急地震速報、津波警報、気象警報などを、人工衛星や地上回線を通じて、全国に送信し、瞬時に住民に伝達するシステムのことだ。ミサイルにおいては「日本の領土・領海に落下する可能性又は領土・領海を通過する可能性がある場合に使用」するとしている。
真田氏は、Jアラートに関する問題点を3点挙げている。(1)各自治体のJアラートや防災無線が常に稼働できる態勢になっていない(2)特に東京などの大都会では、防災無線から情報が伝わるかが不明である(3)北朝鮮のミサイル発射「実験」のたびに、Jアラートが稼働すれば、いつのまにか国民が慣れてしまうのではないか――という点だ。
(1)に関して、総務省消防庁は4日、Jアラートによる住民への情報伝達で、北海道と青森県の計6市町で防災行政無線などの放送が流れなかったと発表している。また(2)について、真田氏は、常に宣伝や音楽が流れる「渋谷のスクランブル交差点」などを例に出した。
武力攻撃などの有事に際して国や国民の安全を保つための国民保護体制の問題点にも触れた。仮にミサイルが着弾した場合や日本有事の場合、国民のあいだで大混乱が生じ、どのように対応してよいか分からず、役所や自衛隊に対して問い合わせが殺到することも考えられると真田氏は指摘している。
他方で、Jアラートを評価できる点は何か。(1)機材の不具合もあるが、日本全国に情報を瞬時に伝えられる体制そのもの(2)「緊急速報メール」や「エリアメール」といった携帯電話へのメール(3)テレビから視聴者へ提供する情報の的確さ――の3点を、真田氏は挙げている。
Jアラートを受けて国民が取れる時間的猶予が1~2分程度と「非常に短い」のは、警報自体の問題というより「発射地点である北朝鮮と日本が地理的に近いことに起因している」とも、真田氏は付言している。
ではJアラートの問題は、どのように改善するべきなのか。真田氏は、各自治体が日頃からJアラートと防災無線を整え、いつでも稼働できるように関係者が訓練しておく必要があると述べる。
Jアラートが発令するのは、「北朝鮮からのミサイル発射(実験)」に限らないという点も重要視している。内閣官房による有事対応マニュアルでは、ゲリラや特殊部隊による武力攻撃や着上陸侵攻、航空攻撃、テロなどで「特別なサイレン音」を使用すると記している。
さらに、政府や自治体は積極的な対応策の広報を国民に対して行うべきだと、真田氏は提言する。ウェブサイトに記された対応策では「不十分」であり、問題意識が強い人物しかサイトを確認しないのではないかとし、ケースごとの対応などについても不明であると指摘。自治体における実動訓練を市街地や学校、競技場といった場所で行うことなどが有効だとした。