原木を「生徒さん」に例える夏井さん
同社が販売する生ハムは、養豚以外の製造から出荷まで全てを元校舎の工場で行っているという。夏井さんは、「田村さんのツイートにありました白神生ハムは教室で卒業(出荷)を待つ生徒さん達でございます」とユーモアを交える。
取材回答時点では、1年熟成と2年熟成の商品をオンラインショップで販売しており、年明けには3年熟成も加わる。
毎年1月~3月に約1500~2000本を手作業で仕込むといい、具体的には成形、血抜き、塩すりこみを経て1か月ほど寝かせ、塩抜き後、熟成庫にあたる校舎2階の教室に吊り下げる。現在は約3500本が熟成中。「年2回、教室内の席替え(生ハムの位置替え)も作業の一つです」と夏井さん。
熟成庫のほか、当時の1年生教室を生ハム造り体験室、給食室は製造室、教材室を資材保管室、職員室を事務所、などといった形で転用している。
校舎は11年前から賃貸物件として市から借りている。その背景として、同規模の工場を一から建造した場合は莫大な費用がかかってしまうと事情を説明。地域住民にとって思い出深い小学校を、外観はそのまま、内装を改修して活用することにした。
ただ、白神山地の麓に位置する元校舎を活用するにあたり、生ハムの敵となる虫には煩わされている。窓の内側に網を設置したほか、冬以外は常に虫の侵入を監視する必要があるうえ、校舎周りの広大な土地の草刈りも頻繁にしなくてはならず、「体力的にも苦労しております」と裏側を明かす。