ラムネ屋が「ワイン」を作る理由
マルキヨーは1951年に創業した清涼飲料水工場。昔ながらの瓶ラムネや、かき氷シロップ、ジュースなどを製造している。なぜワイナリーを設立したのか。創業者を祖父にもつ醸造責任者の増子春香さんは、KURANDを通して次のように説明する。
マルキヨーは、地元を中心に清涼飲料水の販売を続けてきた。しかし昨今の少子化や常連客の高齢化によって、ラムネの製造、販売数は年々減少し続けている。春香さんはできる限りラムネの製造を続けていくため2012年、父・敬公さんとワイナリーを設立。春から夏にはラムネを、ぶどうが収穫時期を迎える秋から冬にはワイン造りに取り組んだ。
ラムネ製造で培った技術はワイン造りにも生かされている。
「ラムネの製造は、ワインなどのアルコールよりも厳しい食品衛生基準があります。
みなさんのイメージでは、ラムネの製造をするより、ワイン醸造のほうが、難しいと思われるとおもいます。
ワインはアルコールなどで(品質が)守られていますが、ラムネは、江戸時代末期に確立された方法で製造する飲料であり、現在の法律に準拠したものを製造するために、サニテーション(洗浄、殺菌)の工程など気をつけなくてはいけない部分がワインよりたくさんあります」
同社では、同じ葡萄品種から、赤、白、ロゼなど各数種類のワインを醸造している。原料が同じであるため、全く同じ状態で醸造すれば同じ味になってしまう。発酵状況で味が左右するワインづくりの現場に、ラムネづくりで培った細やかな衛生環境づくりの知見が生かされたそうだ。