シーズン56本塁打をマークしたプロ野球・東京ヤクルトスワローズの村上宗隆選手をめぐる報道について、インターネット上で一部から「バレンティンの60本が軽視されてる」といった指摘があがっている。
「バレンティン選手に対しての暗黙な排他的意志も表している様だ」
村上選手はシーズン最終戦となる2022年10月3日の横浜DeNAベイスターズ戦で、56本目となるホームランを打った。6月には1試合に2本塁打を放つ「マルチホームラン」で月14本塁打を記録するなどハイペースで本塁打を量産していた村上選手だが、終盤に失速。それでも最終戦の第4打席で見事チャンスを掴んだ。
村上選手がマークした56本塁打は、2013年にウラディミール・バレンティン選手(ヤクルト)が記録した60本に次いでプロ野球歴代単独2位となる。同時に1964年の王貞治氏(巨人)、2001年のタフィ・ローズ氏(近鉄)、02年のアレックス・カブレラ氏(西武)が記録した55本を上回ったことで、「日本選手のシーズン最多本塁打記録」を更新したことが盛んに報じられている。
こうした村上選手をめぐる報道について、バレンティン選手の記録を引き合いに違和感を示す指摘もあがっている。
東京大学名誉教授のロバート・ゲラー氏は4日、スポーツ中継アプリ「DAZN」による村上選手のホームラン動画を引用し、「村上選手が今期よくできたが、『日本人最多56本塁打』との表現に対して複雑な心境がある」として、こう心中を吐露した。
「素直な気持ちを分からない訳ではないが、同時これは日本国籍を有しなかった2013年に60本打ったヤクルトのバレンティン選手に対しての暗黙な排他的意志も表している様だ」
ゲラー氏は「そもそも王さんも。。なんですよね」とするリプライに、「そうです。英字メディアがより正確。『日本に生まれた選手の記録』と書いている。これに王選手が含まれています」としている。
「バレンティンに触れないのは不自然だなあ、とは思ってた」
野球雑誌「野球太郎」などに寄稿している野球ライターのARA氏も4日、「ホームランの55-56-60問題に関しては、55という耳障りのよい数字と歴史的に背番号に託す程の有名度を、バレンティンの時にOver Ride出来なかった贖罪を村上の記録で行おうとしてるように取れた。しかもたぶん無自覚に。『助っ人外国人』とかに表れてる意識の問題も表面化した」とツイートしている。
一般のプロ野球ファンからもツイッターで、「村上三冠王すごいけど、『日本人最多』ってやたら強調するのは、バレンティンの60本が軽視されてる感じでなんだかな」「村上は称賛するけどバレンティンが軽視されがちな風潮は気に入らない」といった声のほか、「シーズン55本塁打も王氏以外にローズ氏とカブレラ氏が達成しているのにほぼ無視」「個人的には王さんとバレンティンにばっか注目が集まってスルーされがちなカブレラローズが不憫でならない」などローズ、カブレラ両氏の扱いにも違和感を覚えたとする声が投稿されている。
56号達成時の実況フレーズにも違和感を示す声があがった。フジテレビ系で放送された生中継中、村上選手のホームランに際し実況アナウンサーは「なんという男なんだ! 今シーズン最終戦、最終打席で歴史の頂点。ホームランの頂に立ちました!」と熱狂した。SNSでは、「歴史の頂点」「ホームランの頂」とする表現について、「バレンティンがいなかったように報じるのは不適切」「バレンティンに触れないのは不自然だなあ、とは思ってた」とする反応が目立つ。
7回ウラ 今季最終打席
— 【公式】フジテレビ野球 (@fujitv_baseball) October 3, 2022
そんな局面で決めるのがこの男 村上宗隆!
日本人シーズン最多本塁打となる 第56号!
おめでとう村神様!#村上 #56号#シーズン最多本塁打#神宮 pic.twitter.com/ZJwpnYd7kq