100年続く専門誌「土木技術」休刊へ アニメ、妖怪、恋...異色特集が話題も「毎月発行の維持が困難」

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   専門出版社「理工図書」(東京都千代田区)は2022年9月28日、月刊誌『土木技術』を休刊すると発表した。

   創刊100年を数える土木・建築関係者向けの専門雑誌で、近年は新規読者の獲得のため「土木の視点から『転スラ』を読み解く」「『愛の不時着』にみる恋と土木」など、一般の人を意識した斬新な特集を組んでいた。

  • 理工図書ツイッターより
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  • 理工図書ウェブサイトより
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2017年に大転換

   『土木技術』は1922年、「土木界を縦横に貫くことをモットーとする」を編集方針に、土木建築雑誌『CIVIL ENGINEERING & ARCHITECTURE』として創刊した。

   媒体資料によれば、発行部数は8000部。読者の職種は公務員、建築会社、土木関連会社、コンサルタント、大学が中心だ。

   2017年には大転換があった。「社会と土木を結ぶ総合雑誌」を新たな理念に掲げ、土木技術者はもちろん、そうでない読者も意識した誌面作りを始める。当時、背景を「近年、情報科学技術の発達やニーズの多様化などを背景として、土木技術と他分野技術との垣根が取り払われつつあります(中略)技術者でない方にも日常生活において土木が支えている様々な形態を、お伝えする雑誌でありたいと考えております」と説明していた。

   それ以降、各号の特集名を「○○と土木」とした。例えば、お酒、戦国武将、オリンピック、旅、映画、人の心理、歌――と、土木と接点のない人でも興味を持ちやすい構成だった。

「創刊100年という節目の年をもって...」

   「アニメと土木」(18年12月号)は、人気アニメ『転生したらスライムだった件』の登場人物が表紙を飾り、原作者へのインタビュー記事「内に秘めるは土木屋の"矜持"-土木の視点から『転スラ』を読み解く-」を掲載した。

   そのほか、「『化物語』と道路標識について」「パトレイバーに見る新橋駅」などアニメを入り口とした土木関連記事を多数揃え、発売前重版が決まるなど反響が大きかった。

   それ以降も、ユニークな特集を次々と世に送り出した。

「甲子園球場の成り立ちとグラウンド整備」(野球と土木、19年4月号)
「まちづくりと妖怪-水木しげるロード-」(妖怪と土木、20年10月号)
「2019 対スコットランド戦を成功に導いた鶴見川多目的遊水地」(ラグビーと土木、20年12月号)
「中村哲医師とアフガニスタン東部での『緑の大地計画』」(農と土木、21年7月号)
「『愛の不時着』にみる恋と土木」(恋と土木、21年9月号)
「メタバース技術研究所―フィジカルとサイバーの狭間で―」(双子と土木、22年5月号)
「温泉の探し方と掘り方」(温泉と土木、22年9月号)

   しかし、2022年12月号で休刊が決まった。理工図書は9月28日、

「雑誌市場が加速度的に縮小する中、毎月発行を維持することが困難となり、創刊100年という節目の年をもって、一定の役割を終えたという断腸の思いで休刊することを決意いたしました」

と事情を明かし、「雑誌休刊後も、弊社では引き続き教科書をはじめ様々な書籍発行を通じて社会の発展に寄与して参ります。長きにわたりご協力、ご支援下さいました皆様に、心より厚く御礼申し上げます」としている。休刊後も、バックナンバーの販売は続ける。

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