2022年9月27日に行われた安倍晋三首相の国葬は「弔問外交」の舞台にもなった。岸田文雄首相は前後の3日間で、外国の要人約40人と会談。ただ、1回あたりの時間は15分にとどまり、踏み込んだ会話ができたかは議論が分かれそうだ。
ただ、日本が直接は関わらない「弔問外交」も活発に行われた。国葬を機に来日した要人同士による首脳会談も相次いで行われ、日米豪印による協力枠組み「QUAD(クアッド)」の参加国からは、16年に安倍氏が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」の意義を改めて強調する発言も出た。
歴代3首相を連れてきたのは「いかに日豪関係が重要かを物語っている」
とりわけ、日本という場を弔問外交に活用したのがオーストラリアだ。アルバニージー首相はハワード、アボット、ターンブルの歴代3首相をともなって来日。記者団に対して「このことは、いかに日豪関係が重要かを物語っている」と説明した。
インドのモディ首相との会談後は、ツーショット写真をツイート。アルバニージー氏が「両国間の重要な関係と友好について議論した」と書き込み、モディ氏はそれを引用リツイートして、アルバニージー氏と「建設的な話をした」と紹介。「多様な分野でインドとオーストラリアの友好を深めるために、今後も緊密に協力していく」ともつづった。
アルバニージー氏は米国のハリス副大統領とも会談。両国政府が公開した会見録によると、ハリス氏が
「安倍元首相が死去したという悲しい状況の中で、平和への献身に関連する共通の目標と絆を共有しているという点で、私たちがここ東京にいることは重要だ」
と話し、アルバニージー氏は
「安倍氏は『自由で開かれたインド太平洋』という、私たちが達成しようとする理念と現実を前進させる上で重要な役割を果たし、クアッドとその創設は、彼が中心となって実現した」
「あなたと私が日本にいることと、モディ氏も今日の追悼式に参列することは、私たちにとってクアッド首脳会合が非常に重要だということを考えると、意義深いことだ」
などと応じた。
カンボジア首相はEU大統領に南シナ海問題を提起
安倍氏が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」は、中国の台頭を念頭に提唱された理念。クアッド以外でも、中国への懸念が話題になった模様だ。
欧州連合(EU)のミシェル大統領はカンボジアのフン・セン首相と会談。カンボジアのニュースサイト「フレッシュニュース」によると、フン・セン氏は、東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国が02年に「南シナ海行動宣言(DOC)」を結んで20年になることに言及。DOCは南シナ海の領有権問題について「平和的手段により解決」することなどをうたっているが、実効性がともなっていないことが指摘されている。DOCには、法的拘束力がある「南シナ海行動規範(COC)」策定にも触れているが、成文化には至っていない。こうした状況を踏まえ、フン・セン氏は「DOCの効果的な実行を目指す」ことと「困難があってもCOC実現に向けた交渉を推進する」ことを表明した。これに対してミシェル氏は「率直な会話ができたことと、グローバルな問題について似た見解を持てたことに感謝」したという。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)