死去した英国のエリザベス女王のひつぎは2022年9月12日(現地時間)、英北部スコットランドのエディンバラにあるセントジャイルズ大聖堂に安置され、市民の弔問が行われている。
ひつぎは、死去した静養先のバルモラル城から約280キロを6時間かけて、黒い霊柩(れいきゅう)車で運ばれた。日本ではあまり見られないガラス張りのタイプだ。正面にはメルセデス・ベンツのロゴも見え、英女王のひつぎをドイツ車が運んだことも話題になった。
葬儀会社「王室の規定に沿って黒くラッピング」
実はこの霊きゅう車は、葬儀会社が王室に貸し出したものだ。側面のガラスには、エディンバラに本社を置く葬儀会社のロゴ入りステッカーが貼られており、それが現地メディアで報じられた。葬儀会社のウェブサイトが一時的につながりにくくなったほか、売名行為だとしてネット上で批判も相次いた。批判を受け、ステッカーはエディンバラに向かう途中ではがされた。
米フォックスニュースによると、この葬儀会社は銀色の霊きゅう車で知られており、
「王室の規定に沿って黒くラッピングされた、当社のシルバーのEクラス・メルセデス・ベンツの1台であることが確認できる」
などと説明したという。
オーストラリアの自動車専門サイト「ドライブ」によると、霊きゅう車は、メルセデス・ベンツの「Eクラス」を独ビンツ社が改造した「ビンツH4」。全長は約6メートルで、ベースになったEクラスステーションワゴン「S212」よりも1.1メートルほど長い。人が乗るスペース2列分と、ひつぎを載せるスペースを確保しているという。
夫はランドローバー、母親はジャガー
ビンツ社は1936年に設立され、元々は葬儀用馬車や救急車両を製作していたが、50年代にメルセデス・ベンツとの関係が深まった。今では、メルセデス・ベンツの車をベースにしたリムジン、救急車、葬儀用車両のメーカーとして知られている。
今後、ひつぎはエディンバラからロンドンまで飛行機で運ばれ、霊きゅう車に載せ替えられてバッキンガム宮殿に向かう。ロンドンでも同じ霊きゅう車が使用されるかは現時点では明らかではない。
エリザベス女王の夫、エディンバラ公フィリップ殿下が21年に死去した際は、英自動車大手ジャガー・ランドローバーの「ディフェンダー」を改造した特注車が使用された。殿下自身がデザインや改造に関わったことも話題になった。エリザベス女王の母親、エリザベス王太后が02年に死去した際の霊きゅう車は、ジャガーを英ウィルコックス・リムジン社が改造したものだった。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)